介護費の自己負担は親が死ぬまで続く

一方、2000年に始まった介護保険制度の自己負担割合も、これと同様です。「ただ、医療と介護では、ひとつ大きな違いがあります」とIさん。

「医療は病気やけがを治してもらうために受けますよね。そして治って健康を取り戻せば支払いは終わる。でも、介護の場合は通常、終わりがありません。もちろん介護サービスを提供する我々も良くなってもらうことを前提として仕事をしています。機能回復のためのリハビリを行なうなど努力をしていますし、それによって要介護から要支援になる方もいます。が、そういう方は稀で、大半は負担を背負い続けることになります」(Iさん)

この負担がけっこう重いのです。

では、実際に老親が要介護になり、在宅介護が始まったら、月にどのくらいの出費を覚悟しなければならないのでしょうか。

介護保険が適用されるサービスの金額はとても複雑で、素人にはとても理解できません。要介護度によっても限度額は異なりますし、サービスも内容によって金額が非常に細かく分けられています。しかも「円」ではなく「単位」で表示。単位としているのは地域によって人件費などが異なるため、補正をする必要があるからだそうです。つまり、1割負担として0.1を掛ける元の料金が分らないわけです。

そこでケアマネージャーが、出費の心配をした利用者や家族から「月にいくらかかるのか、ざっくりでいいから教えてください」といわれたとしたら、どう答えるのか、Iさんに聞いてみました。

「利用者さんの状態や置かれている環境などによって、必要となるサービスは異なりますから非常に難しいのですが、在宅での介護ができる要介護2*の方を想定したサービスにかかる費用をお答えするとすれば、4万円くらい。余裕を見て4万5000円は考えておいてください、といいますね」(Iさん)

まず必要になるのは、介護用ベッド、車椅子など介護用具。これはひと月のレンタル代がベッド1500円、車椅子500円ほどだそうです。

(編注*歩行や立ち上がりなどの日常生活での動作や行動を一人で行うことが困難。また入浴や排泄、食事の時に何らかの介助が必要。理解低下など認知症の症状を呈している状態も含まれる)