生徒よりも保護者が喜ぶ!?

【藤原】いま若新さんが言ったような化学反応は、一条高校の「よのなか科」の授業でも起きています。よのなか科では、「ハンバーガー店の店長になって、どこに出店すると儲かるか考えてみよう」という定番のテーマのほか、自殺と安楽死の是非、少子化問題をどう解決するかなど、白黒つかないテーマを生徒たちが議論しています。

ここで何が起きているかというと、生徒よりも保護者のほうがこの授業を喜んでいるんです。保護者たちの感想には、「中学や高校でこういう授業を受けていたら、自分の人生は変わっていた」という声が多く聞かれます。また、正解のない課題を生徒たちと一緒に考えると、彼らは大人が考えもつかないような飛び抜けた発言をするからおもしろいんですね。中学生や高校生も意外と考えているんだな、ということがわかる。これはすごく大事です。

【若新】企業組織のなかでも、「教える」「教えられる」という関係性には限界がきていて、見直す時期ではないかと思ってるんです。僕の父は1950年生まれで、仕事では上司や先輩の言うことを素直に聞いて学ぶというのが当たり前という世代でした。たとえ上司の主張に反発を覚えても、がまんできれば給料はちゃんと増える、それで冷蔵庫や冷蔵庫が買えるという時代だったわけです。

ところがいまは、なにか教授されても「それって本当なの?」ってすぐに疑う若者が増えています。恐ろしいのは、すぐにネット検索すれば「◯◯社長や△△大学の教授は違うこと言ってる」とすぐに別の情報にアクセスできてしまう。そうなると上司や先輩は「俺が言うことが正しい」とは言い切れない。すごく説得が難しい社会だと思います。

【藤原】同じようなことは、学校でも10年以内に起こると思っています。つまり、教えるのがうまい先生の授業をオンラインで縦横無尽に受けられるようになれば、教室での先生の授業が面白くないと、先生の話を聞いているふりをして、スマホでオンライン授業を受ける生徒が出てくるでしょう。オンライン授業に置き換えられてしまう危機感が先生にはあるわけです。そこで生徒にどういう「納得感」を持たせるのか、あるいは腑に落ちたという感覚を得させるかは、一大課題だと思いますね。