外資系企業からやってきたコンサルタント系上司や合併先の上司、政府の「女性の活躍推進策」で下駄を履かされた女性上司……。もう何がきても怖くない、部下の心得と対策を伝授しよう。

【バブル生き残り組上司】昔話も聞き流し、一歩下がってプライドを尊重

吉田兼好は『徒然草』で「何事も、古き世のみぞ慕わしき。今様はむげにいやしくこそなりゆくめれ」と記している。端的に言えば「昔はよかったなぁ」ということ。「バブル生き残り組」上司にありがちな傾向といえる。

そうした昔話に浸る上司に対し、「今言っても仕方ないでしょう」と否定しても始まらない。バブル世代にとってのある種の価値観なのだから、そのプライドを尊重してあげたほうがいい。

比喩的な言い方になるが、相手がアナログの話をしているときに、デジタルの話で混ぜ返してはいけない。「アナログなんてダメですよ」と言えば、「デジタルだってダメじゃないか」という不毛な議論にしかならないからだ。

相手がアナログの話をしているなら、まずはその話を聞いてあげる。ただ、現実問題としてデジタルでやらなければいけないわけだから、その後で「では、デジタルのところは任せてください」という方向に持って行くしかないのだ。

私自身の経験で言えば、かつての上司が企画会議で「この前うまくいったあの企画を盛り込もう」などと言い出すことがあった。「この前」といっても20年以上も前の話。部下はみんな心の中では「そりゃないだろう」と思っていたが、いったん了承しないと進まないので、とりあえず話は聞くようにしていた。

江戸時代に書かれた『葉隠』には、こんなことも書かれている。お殿様に意見が通る人の話だ。一度目の意見をすると「ダメだ」と言われ「ははあ」と言って引き下がる。二度目も「この前のお話ですが」と進言すると「ダメと言ったらダメだ」と言われ、また「ははあ」と引き下がる。そして三度目に少しだけ直した意見を言うと「あいつが三度言ってくるのだから、なにかあるのだろう」とお殿様も判断して意見が通る。

人間の心理にはそういうものがあるのではないか。つまり、相手の教えをいただきましたという形にすると「まあいいだろう」となる。これは相手のプライドを尊重するということにほかならない。「バブル生き残り組」上司も、まさにそれに近いところがある。上司の沽券に関わるから、とりあえずは部下の意見を否定する。しかし、説明しきれないので「まだまだだな」「ちょっと違うな」など、曖昧な印象評価的な言葉しか出てこない。それに対し「どこが違うんですか?」などと突っ込んでしまうと、相手は逆ギレするだけ。そこはよし悪しの問題ではなくプライドの問題だから、一回引き下がるといいのだ。

▼特徴
・「昔はよかった」と懐かしんだり、昔話を何度も繰り返したりする。
・一度は部下の意見を否定しないと気がすまない。
・曖昧な印象評価が多い。

▼対策
・「昔はよかった」という相手の価値観を認めてあげる。
・否定されたら素直に引き下がる。
・意見や企画などが否定されてもあきらめずに、何度も提出すれば相手も折れる。

本田有明
本田コンサルタント事務所代表。日本能率協会を経て人事教育コンサルタントとして独立。経営教育、能力開発の分野でコンサルティング、講演、執筆活動に従事。著書に『上司になってはいけない人たち』(PHP研究所)など。
 
(小澤啓司=構成 永井浩=撮影)
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