将来はボットが経営のディシジョンを行うようになる?
こうした活用シーンの広がりを考えれば、機械学習で進化するボットは、将来的には、ビジネスシーンでも重要な役割を果たすのは間違いなさそうだ。ガートナーによると、2020年までに新たに開発されるエンタープライズ・アプリケーションのうち約80%において、チャットボットが多用されると予測。「新たなプラットフォーム・パラダイムの最重要要素として、企業のIT部門のほとんどが、会話型AIを優先して導入することになる」としている。クラウドおよびモバイルのトレンドにおいて、重要な要素のひとつに位置づけている。
富士通・山本正已代表取締役会長は、同社が創立100周年を迎える2035年にどんなことが起こるのかを、16万人の社員が参加して、ジャムセッションを行ったことに触れながら、「2035年には、世界の人々が、バーチャル空間上で、対面に近い形で対話を行うことができ、自動翻訳機能も、それぞれの国の文化などを考慮した自然なやりとりができるようになる。そして、ここで行われる議論は、AIがファシリテータを務めて、専門家や関連データを駆使して、解決へと導くようになる」と予測してみせた。そして、「これはテクノロジーロードマップから見ても十分実現が可能である」と続ける。
ただ、数多くの会話を機械学習することによって、ボットの発言内容が変化することは危険もはらむ。今年3月に、米マイクロソフトがサービス提供を開始したAI「テイ」では、心ないネットユーザーの書き込みが反映された結果、人種差別発言などを行い始め、サービス停止に追い込まれた例もある。
富士通の山本会長が指摘したように、機械学習をベースにしたボットは、ビジネスの業務支援だけでなく、会議の運営や、将来的には経営のディシジョン支援にまで進化させるような動きがこれから出てくるだろう。その道のりはまだ遠いともいえ、解決しなくてはならない課題もありそうだ。だが、ITの力を経営に生かす上で、ボットなどを活用したConversation as a Serviceは、今後避けては通れない潮流になるに違いない。