国内の人口減少や少子高齢化の進展、そしてマイナス金利の長期化など、先行きが懸念される環境の中で、今年7月に生命保険協会の会長に就任した根岸秋男・明治安田生命社長に、協会としての取り組みや業界の展望を聞いた。
生保業界は国内市場を諦めたのか
──生保協会として、どのような活動に取り組んでいくのか。
【根岸】協会では、高齢者対応、保険教育、消費者志向、社会保障、成長戦略、国際競争力強化という6つの大きなテーマを掲げて継続的に取り組んでいる。なかでも、先に挙げた3つは重点的に取り組んでいきたい。いずれにも共通するのは、少子高齢化がますます進展する中で、官民一体となって超高齢社会を支えていくことの重要性だ。
──高齢者対応では、マイナンバー(個人番号)制度の民間利活用を挙げている。
【根岸】単身世帯や施設に入居する高齢者が増え、本人が保険金を請求したくてもできない場合や、保険会社による安否や所在の把握が困難なケースが増えつつある。こうした状況を踏まえ、協会では高齢者に配慮した取り組みのガイドラインを作成し、それに基づいて各社が自主的に取り組んできたが、それだけでは限界がある。昨年成立した改正マイナンバー法では、2018年10月をめどに、民間利活用についても検討していくことが掲げられた。マイナンバーを活用できれば、高齢者の安否や所在の情報を共有できるため、お客様自身による面倒な請求手続きが省略でき、迅速で確実な保険金の支払いが可能になる。これについては私の任期中に提言をまとめたいと考えている。
───保険教育の重要性は。
【根岸】最近、20代を中心に保険離れが起きている。その一つの理由として、保険に対する理解の不足が挙げられる。社会保障制度を補完するものとして、民間保険は中核的な役割を担っており、若い世代にも、自助努力の重要性への理解を深めてもらうことが重要だ。そのために、学校での保険教育の実施を、教材提供や講師派遣などを通じて後押ししていく。また、消費者とのコミュニケーションのあり方についても、もっと工夫が必要だと考える。SNSの活用や店頭での相談サービスなど、若年世代の行動様式に適したチャネルの多様化にも取り組むべきだろう。