【安倍】私が経営する会社には男性社員が2人いますが、仕事上で伝えなければいけないことはストレートに伝えます。ただ、プライベートな関係の相手には、基本的に言わないですね。たとえば、周りからよく思われていない女友達がいたとしても、彼女の言動に対して忠告はしません。私は彼女を好きなのだからそれでいいというのと、人って長所も短所もないんじゃないかと思うんですよね。

【佐藤】長所と短所は表裏一体だから。

【安倍】そう、そんな気がして。それに、たとえ忠告をしても、相手が受け入れる気持ちがないときは、結局、なにを伝えても無駄なんですよね。人って聞きたいことしか聞かないので、カチンとされておしまい。私自身もそういうところがあるから、よくわかるんです。

家庭内野党を公言するワケ

【佐藤】昭恵さんの話を聞く限りでは、ご主人である安倍首相と、夫婦で笑いのツボが一致していますよね。2人ともシュールな笑いが好き。

【安倍】それはあるかも(笑)。主人とは考え方が違う部分もありますが、全部が一致しているのが必ずしもいいわけではなくて。違うところも含めて、お互いが好きだったり、尊敬し合ったりできることが大事なんじゃないかなって思います。政策に対しても、疑問に感じたら主人に伝えています。主人にとっては耳が痛いこともあるでしょうが、私がさまざまな活動で出会う人たちの意見も含めて、いろいろな意見に耳を傾けてもらうことが大事だと思っているんです。「家庭内野党」と自分で言っているんですが、それも私の役割の一つかなと。

【佐藤】夫婦ってパートナーだったり、友達だったりといろんなパターンがあっていいわけですからね。

【安倍】人間はみんな一人ひとり個性があるわけですから、それを生かしてお互いに協力しあえる形をつくっていくのが理想ですよね。

【佐藤】もし、夫がバリバリ働いて妻が家庭を守っている夫婦なら、不満を抱く前に夫が病気にならないように考えてあげることが大切だし。

【安倍】今はお金があれば幸せになれるかというと、そういう時代ではないし、いい大学に入って、いい会社に就職すれば安泰なのかといったら、決してそんなこともない。だからこそ、どういう暮らしをしたいのか、何が幸せなのかということをしっかり考え直す時期なのかなと。神道に「中今(なかいま)」という思想があって、今を生きることが一番大事だと教えているんですね。先々を考えて準備することは必要かもしれないけれども、心配ばかりしているよりは、今、この瞬間を楽しむ。その積み重ねが幸せな人生といえるんだろうなと思うんです。

安倍昭恵
首相夫人。聖心女子専門学校卒業後、電通勤務を経て、1987年に現首相の安倍晋三氏と結婚。夫の一度目の総理退任後、立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科に入学・修了。現在はファーストレディとしての活動のほか、女性の社会進出を支援する講座型スクール「UZUの学校」、無農薬有機食材を使った居酒屋も経営。ほかに、農業支援、教育、福祉活動など、さまざまな活動に携わる。著書に『「私」を生きる』『どういう時に幸せを感じますか?』など。
佐藤美加
アッシュ・ペー・フランス取締役。1984年に原宿で創業し、現在、世界中のクリエーターが作る衣類、装飾品、雑貨などの販売、卸、合同展示会の企画、運営、出版、PR、海外展開などを行う、アッシュ・ペー・フランス。創成期に入社し、セレクトショップの先駆けとなる「ブティック ドミニクロンド」のカリスマ販売員・店長として有名になり、バイヤーに。2000年から有名百貨店をはじめとしたバイヤー向けの大規模合同企画展示会「rooms」プロデューサー。11年より同社取締役。
(上島寿子=構成 市来朋久、束田勝広=撮影 時事通信フォト=写真)
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