日本人はどう対応したらいいか

アメリカの次期大統領が誰になるかで、世界が大きく変わる。特に日本は金融や貿易、軍事面で最も大きな影響を受ける国だけに、私たちは2016年のアメリカ大統領選挙をしっかりと注視する必要がある。候補者個人や表面的な事象ではなく、それが出てきた背景とその本質を分析することで、私たちの国、日本の次の航路も明確に見えてくるからだ。

秋の臨時国会の優先事項はTPP、安保法制関連、移民政策の3つだと言われているが、現状を見る限り、日本はヒラリー政権を前提に話が進んでいると思われる。

しかし、トランプ氏が大統領になった場合を想定すると、日本を変革する起爆剤になるだろう。国防について根底から考え直すことが迫られ、TPPは仕切り直しとなり、参加を掲げてきた安倍政権ははしごを外される形になる。これは見方を変えると、どこを守り、どこを改革していくべきか、交通整理をして国益を最大化するチャンスが与えられるということだ。外部からのショック療法のようだが、新しい未来をつくっていくチャンスが来たと捉えることもできる。どう活かすかは私たち次第なのだ。

リーマンショックで本当に守るべきものに気づき目が覚めた、アイスランドの例が参考になるだろう。あれほど小さい国が、自ら取捨選択して国をつくり直した。日本は「政府・マスコミを鵜呑みにするランキング」で世界トップだが、こんな時代だからこそ情報を取捨選択し、自分の頭で考え意志を持つことが何より重要になってくる。今まではアメリカの顔色をうかがい、なかなか思い切った改革ができなかったが、今のように世界全体が同時カオス状態になる時こそ、自分の国の幸福と安全を100年単位で考え、思い切った手が打てるのではないか。

アメリカの大統領選が3つのうちどの結果になったとしても、日本人は恐れることなどない。この国には守るべき宝がたくさんあるからだ。大きく世界が変わる時は、どの国も試される。むしろ平時には気づかなかった自国の素晴らしさが見えてきて、必要なものとそうでないものがクリアになるだろう。

国際ジャーナリスト 堤未果(つつみ・みか)
東京生まれ。NY市立大学大学院国際関係論学科修士号取得。国連、アムネスティ・インターナショナルNY支局員、米国野村証券を経て現職。日米を行き来し、各種メディアで発言、執筆・講演活動を続ける。『報道が教えてくれないアメリカ弱者革命』で日本ジャーナリスト会議黒田清新人賞、『貧困大国アメリカ』(3部作、岩波新書)で日本エッセイストクラブ賞、新書大賞受賞。多数の著書は海外でも翻訳されている。近著に『政府はもう嘘をつけない』(2部作、角川新書)がある。
(代表撮影/ロイター/アフロ=写真)
【関連記事】
日本政界「トランプでも地獄、ヒラリーでも地獄」
世界を席巻するポピュリスト旋風は、どこまで広がるか?
オバマの8年間で、アメリカはどう変わったか?
「カネ、酒、女」トランプ大統領の素顔
米国大統領選で浮上した「消費税」の白熱論議