――幼児教育・保育の無償化は、どれくらいのリターンがあるのでしょうか。日本ではまだまだ、子どもの教育は家庭の責任とする考え方が根強いですが。

【玉木】米国で「ペリー幼児教育計画」という実験プロジェクトが1960年代から実施されています。それによると、就学前教育を受けた子どもは、そうでない子どもよりも学歴が高く収入が多いという結果が出ています。加えて、持ち家率が高く、生活保護受給率や逮捕者率が低いそうです。現在5歳の子どもが、将来ニートになるのか、それとも優良な納税者になるのか。これは日本の将来を左右する問題ですよ。

代表選演説の様子(9月8日、静岡)

子育て世帯にとっては毎月4万5000円の支援になる

――30~40代の子育て世代にとって、子どもの教育費は非常に大きな問題です。教育費が出せないから子どもを増やせない、という家庭は多い。実際に玉木さんの言う政策を実施し、5兆円を教育に投資した場合、子育て世帯はどの程度の支援が得られるのか。具体的な数字を教えてください。

【玉木】就学前教育の無償化は約1.2兆円で実施できると試算しています。単純計算ですが、5兆円を20代から40代の子育て世代の世帯数(931万2893世帯)で割ると、年間約54万円、毎月約4万5000円の支援が得られることになります。世帯年収500万円の場合、現在、東京都の認可保育園の保育料が約1万5000~2万円程度ですから、大きいですよ。実現可能な政策だと自負しています。

――民主党はかつて「子ども手当」を公約に掲げましたが、財源問題で満額支給を断念していますよね。玉木さんの案も、財源が確保できなければ難しいのではないですか。

【玉木】だからそれを「国債」という形で実施するのです。「財源がない」というのは役人の発想です。やるべき事があったら手を尽くして実行するのが政治の役割です。これまでの政治は、選挙で票を集めやすいシルバー世代におもねる政策が中心で、効果が出るのが20~30年先になる、子ども関連の政策は後回しにしてきました。現在は、そのツケが回ってきたと考えてよいでしょう。20~30年先を見据えて事を興すことができるのは、政治だけです。

――しかし、国債とは借金です。借金をして未来の若者にツケを回すということでは、他の国債と同じではないですか。

【玉木】大事なのは、借金をしてでも少子化問題に本気で取り組まなければならないということです。それだけの投資価値があるのが「子ども」なのです。これまでのように中途半端な政策をチマチマと実施していても、必要なところにお金が回りません。結果として効果が出ず、無駄な投資を繰り返すことになります。思い切った子育て・教育支援によって子どもの数が増えれば、彼らは将来、立派な納税者になります。20年~30年償還の「こども国債」を発行すれば、彼らが自らその借金を返していくことになります。

――「子どもに投資しよう」というスローガンを強調すると、シルバー世代の社会保障が手薄になる印象を持ってしまいます。年金世代から文句は出ませんか。

【玉木】現役世代が支払った保険料を仕送りのように高齢者などの年金給付に充てるのが今の公的年金の仕組みです。財源を負担してくれる若い世代を育てることをしないと、高齢者の安心も立ちゆかなくなる。そこを理解してほしいのです。