ビールがうまい! そう若者に感じてもらいたい。年々ジリ貧になっているビール市場を「どげんかせんといかん!」とばかりに各社が動きを本格化。営業現場を追った。

絶好調のサッポロとサントリーが伸びる

「今年はビール強化元年」

2016年の事業方針で、サッポロビールの社長、尾賀真城は力強く言い切った。業界に先駆けて発泡酒や新ジャンルを開発してきた同社だが、原点であるビールに注力すると宣言したのである。

成果は早くも表れた。16年上半期(1~6月)のビール単体の課税移出数量を見ると、サッポロは前年比6.2%増と飛躍。ビールのシェアを14%に上げ、2位のキリンとの差を縮めた。

サントリーもビールが好調で前年比4.7%増となったのに対して、アサヒとキリンは失速気味だ。アサヒのシェアはダントツだが、課税移出数量は前年割れ。スーパードライの業務用樽生の不調、つまり居酒屋需要の減少が足を引っ張った。キリンも一番搾りは堅調だが、それ以外のビールが伸び悩みマイナス成長となった。

先を見据えるとビールの強化は、どの社にとっても必須の課題だ。論議される酒税の一本化が実施された場合、ビールの酒税が下がって販売価格は安くなる。発泡酒や新ジャンルに流れていた層が戻ってくるだろう。そのときに選ばれるメーカーであるためには、今からビールのブランド力を高める必要がある。

特にアピールしたいのは、20~30代の若年層だろう。ビール離れが顕著なこの世代を取り込めるかどうかは、先々の業績を左右する。販売数が伸びた「サッポロ生ビール黒ラベル」は、CMに妻夫木聡を起用。「オヤジくさいビール」という印象は薄れ、むしろ「渋くてかっこいい」との声を若者から聞くようになったという。

取り込んだのは若年層だけではない。これまでサッポロが劣勢だった西日本でも伸び、特に関西では4社の競合が激化しているという。各社の営業担当はいかに戦っているのか。「関西夏の陣」を追ってみよう。