中国景気の減速懸念や英国のEU離脱決定、為替の急激な変動など、厳しい経営環境が続く。新しくトップに就任した男たちは、この逆境にどう立ち向かうのか。
組織拡大からフラットへ、現場の意見吸収
プロ経営者・藤森義明氏の突然の社長退任が話題になったLIXILグループ。後任は、インターネットによる工具通販会社MonotaRO(モノタロウ)など11社を創業した実績を持つ瀬戸欣哉氏。いわば起業家が、合併とM&Aで巨大化した住宅設備最大手の陣頭指揮を執ることになる。
――流通からメーカーという異分野への転身だが。
【瀬戸】以前から潮田洋一郎会長(現・取締役会議長)に「そのうちLIXILに来る気はないか」と声をかけてもらっていた。具体的な打診は去年の初め頃だったと思う。幸い、MonotaROも2009年には東証一部へ上場。後継者が育ったこともあり、新しい挑戦はやりがいがあると考えて受けさせていただいた。
今まではゼロから会社を起業する仕事だったといっていい。けれども、LIXILグループは、事業規模もはるかに大きいし、社員の数も多い。それだけに、グループ全体を次のステージに進める仕事の難易度は高い。私自身がどれだけ強いメッセージを発して社員とコミュニケートできるかが勝負。今年の1月から最初の100日間で10カ国を回り、600人余りの社員と1対1で話した。
――そこから浮かび上がってきた課題は何か?
【瀬戸】5年前に住生活の分野をくまなくカバーできる5社が合併した。しかも、藤森さんの時代は海外企業を含めた積極的なM&Aで急拡大を図ってきた。そうすると、組織はどうしても複雑になる。実際、現場とのコミュニケーションがうまくいっていないと感じている。これを放置すると、経営判断のスピードを遅らせ、意思決定の質を落とす。結果として本社経費が膨らみ、相対的に営業利益が小さくなっている。
会社は、大きくしたら無駄を整理するという作業を繰り返さなければならない。藤森さんは拡大に優先度を置いていたが、私はそれよりも会社の症状に耳を傾けなければと思っている。現場に近いところで判断とコミュニケーションができ、社員が自分で考えているという感覚を持てるよう、組織はシンプルでフラット、かつ俊敏にしなければいけない。