中国景気の減速懸念や英国のEU離脱決定、為替の急激な変動など、厳しい経営環境が続く。新しくトップに就任した男たちは、この逆境にどう立ち向かうのか。

セブン銀行で学んだ「共創」体験を全面展開

2010年代に入り、収益構造の改革を進めてきた日本電気(NEC)。携帯電話事業や半導体事業を分離・再編させ、経営課題に目途をつけた。そして同社は4月、新野隆氏を新社長とする体制へ移行。情報通信技術を用いてソリューションビジネスに注力することで、成長の加速を狙っている。
――社長昇格は、昨年12月25日という早い時期での発表だった。
日本電気代表取締役・執行役員社長兼CEO 新野 隆氏

【新野】今年の4月から新中期経営計画がスタートしている。この3年間は「社会ソリューション事業」に舵を切り、経営基盤を安定、成長させる重要な時期になる。その意味で、「新経営陣に中計の策定、新年度の予算編成を任せる」という遠藤信博会長の配慮を感じた。

指名・報酬委員会から社長候補に推薦されたとき、遠藤会長とは1歳違いなので、世代交代の視点からは、もっと若い人がいいと考えていた。ただ、これからは反転攻勢に入り、NECが目指すべき企業像を推し進めなければならない。そこで、遠藤会長と二人三脚で走ってきた私がバトンを受けたというわけだ。

――入社以来ずっと、金融機関向けのシステム事業に携わってきた。その経験をどう生かすのか?

【新野】思い出深い仕事を挙げると、セブン-イレブン・ジャパンが銀行業に参入する際のATM設置に当初から関わったことがある。コンビニの棚は幅が90センチメートルと決まっていて、半分の45センチメートルに収めるために一から設計し直した。また「セブン銀行」は金融機関ではなく、サービス業であり、コンビニの商品を開発するという発想で、異業種のパートナー企業と調整しながら取り組んだ。

このとき、革新的なビジネスモデルはNEC1社ではできないと認識した。事業パートナーや顧客との“共創”が不可欠で、そのコーディネート役をわれわれが担う。この考えは、あらゆるモノをインターネットにつなぐIoTやAIといった領域での事業展開に生かせると思う。