なぜ「勉強しろ!」と命じるのはアブないのか?

【1.「頭のいい子」の親は、「勉強しろ」とは言わない】

さて、「頭のいい子」の親は、「勉強しろ」と言うのかどうか。以前「東大合格者の親は、勉強しろと言わない」というのが話題になりました。東大生ではありませんが、実際に私が小学校の現場を見てきた結論から言うと、「頭のいい子」の親の多くは、我が子に「勉強しろ」と言っていないようです。

どの年のどの子供に聞いても、またその親に聞いてもそうなので、大方は間違いないと思います。正確には、「勉強しろ」と言わないで勉強する状態に持っていっています(そのカラクリは後述します)。

【2.「勉強しろ」は危ない言葉】

「勉強しろ(しなさい)」というのは、大変使い方が難しい言葉です。

この言葉は短期的で、行動が目的化しており、有無を言わさぬ命令です。

「とりあえず勉強すればいいんでしょ」という思考となり、机に向かうものの、やがてゲームしたり漫画を読んだりしてダラダラするのがオチです。様々な漫画によく出てくる、勉強嫌いの子どものキャラクターを思い浮かべるとわかりやすいです。反応としては健全です。

逆に、もしこの言葉で本当に勉強するようならば「言うことをきかないと怖い」「親にいい子だと思われたい」というのが動機になっている可能性があります。「命じられる」→「勉強する」というサイクルができます。

コマンドによって動く「ロボット人間」製造工程の典型的パターンとなり、能力を越える事態に直面した時か、成長過程で自我が強くなった時に挫折します。この「聞き分けのいい子」の場合は、表面的かつ短期的にうまくいっているように見えるので、親は安心してしまいます。

次項に挙げる場合のように、本当に勉強が大切と思って自主的にやっているのか、よく見極める必要があります。

【3.「勉強しろ」が良薬になる場合もある】

「勉強しろ」の言葉で十分に効果が出る場合があります。

それは、子どもが心から尊敬している人や、自分が進んで習っている人が言う場合です。

 

例えば、子どもが憧れているサッカー選手に「サッカーには学校の勉強も大切。一生懸命勉強しなさい」と言われたら、やる気が一気に出ることは十分にあり得ます。

子どもの通う塾の講師や地域クラブのコーチなどは、ここが強みです。「志望校合格」や「勝利」という揺るがない共通の目標があるため、「勉強しろ」「練習をがんばれ」の言葉に必然性と説得力があります。

学校の先生を尊敬している場合は話が早く、普段から勉強する子どもになります。学校の先生で「勉強をしなくていい」ということは、通常ほとんどないからです。

賢い親は、子どもの前で先生やコーチを褒めたりするのがとても上手いのです。(これを「陰口」の反対で「陰褒め」といいます)特に幼い子どもは親の認めたものを無条件に信じるため、効果抜群です。そして怖いことに、マイナスの効果も抜群です。無条件に大人を蔑むようにもできます。

「勉強しなさい」と我が子にいわない賢い親は、もしかしたらこの陰褒めというカラクリを知っているのかもしれません。子供自らが勉強をしようかな、と自然に思うように上手に導いているのです。