【選択その3】不動産投資

 一時期、不動産投資も節税効果が得られるともてはやされたことがあった。マンションに投資するとローンの返済額が家賃収入を上回るが、赤字分を給与所得と損益通算すれば税金が戻ってくる。

しかし、このスキームは「04年の税制改正により通用しなくなった」と、『サラリーマンでも大家さんになれる』シリーズで知られる賃貸業コンサルタントの藤山勇司氏は語る。

「『土地にかかる利子の損益通算不算入』が最も痛かった。マンション価格のうち多くを占める土地の部分にかかる金利が損益通算できなくなったのです。さらにマンションの売却損を給与所得などと損益通算できなくなったことも大きい。つまり政府は一本の法令によっていかようにも網を絞ることができるのです。結局、世の中のルールは強い奴がつくるということ。弱者のサラリーマンが強者のふりをするといつかガツンとやられる」

そのことを念頭においていれば「赤字を想定した不動産投資などできないし、すべきではない」と藤山氏は警告する。

「不動産投資は利益を生む自立した事業であるべきです。どんな形態であれ、赤字の事業は続かないし、金融機関からだって信用を失いますよ」

藤山氏は、こんな例を引き合いに出す。

「不動産投資で赤字を出して、経営する医院の黒字と相殺していた医師が、医療設備を更新しようと銀行に融資を依頼した。ところが銀行は赤字を抱える医院には融資できないと断った。節税目的で赤字を出しているといくら説明しても通じません。節税が過ぎて本業のほうに悪影響が生じてしまった実例です」

正しい節税は納税者の権利だが、無理な節税は身を滅ぼす。最初から赤字目的の事業はどこかで破たんするという教訓である。

無税の人を目指す前に、副業をやるなら、とりあえずは黒字を目標に本気で取り組む。自分で確定申告し、節税しながらも、税のしくみを理解して税金の使い道を厳しく監視する目を養う。会社があてにならなくなってしまった時代、それこそが、サラリーマンの正しい税金との付き合い方なのではないだろうか。