手洗い、うがい、消毒では予防できない?

「トゲ、つまりスパイクはたんぱく質でできており、ウイルスの表面に1500個ほどついています。スパイクには2種類あって、各々HとNと呼びます。Hは細胞に取り付くためのもの、Nは細胞内でウイルスが成熟した後に、細胞からウイルスが出て行くためのもの。逆に言えば、スパイクがないとウイルスは人間の体内に入っても細胞に取り付くことも成熟して出て行くこともできません。センダンの抗ウイルスメカニズムは、ウイルスの吸着阻止にあることが電子顕微鏡写真で判明しました」(根路銘氏)

つまりセンダンはスパイクを破壊し、ウイルスを死滅させる効果があるのだ。スパイクのないウイルスは人の体内に入っても細胞に付着も増殖もできず、人がインフルエンザにかかることはない。ちなみに、A型インフルエンザウイルスは、豚型インフルエンザがH1N1、鳥インフルエンザがH5N1など、という具合にHとNの組み合わせで分類される。

殺傷能力に加え、もう一つの注目点である予防効果について根路銘氏が話す。

「厚生労働省は、インフルエンザは咳やクシャミによって2m以内の範囲内にいる人に飛沫感染するとし、手洗い、うがい、アルコール消毒を奨励しています。だが飛沫感染対策ではインフルエンザを予防できません。これに対し米国では、インフルエンザが空気感染することが今年の学会で発表されたのを受け、政府が飛沫感染対策から空間消毒に予防策を切り替えることを決めた。日本も早急に空間消毒に切り替えるべきです」

厚生労働省は、2m離れていれば飛沫がかからないとし、空気感染を否定しているが、米国は電車や室内など密閉された空間にいる全員が感染する恐れがあるとし、ウイルスが浮遊する空間そのものを消毒する必要があるととらえている。

「インフルエンザは空気感染が主体です。センダンの抽出液を2000倍程度に薄めても、空中消毒から30分もたてば空気中のウイルスのスパイクが壊れ、感染しなくなる。刺激臭がなく無害で安全性が確認された成分を使い空間消毒する方向に日本も変えるべきです」(根路銘氏)

空間消毒用のセンダン抽出液噴霧器(オフィス用)は11月に完成予定だ。

(日本大学医学部=写真)