参院1人区で自民党が圧倒的に強い理由は、同党が農村部に強い支持基盤を有するためである。近年では複数区において、対抗する野党の分立により、自民党が相対的に押し出されている。このため、「都市部でも自民党が優勢となっている」と論じられることがあるが、農村地域になるほど比例区の得票率が高くなる傾向は変わっていない。人口規模の大きな複数区と比例区である程度の議席を獲得し、1人区で大差をつけるのが、参院選における自民党の「黄金パターン」である。
だが、この黄金パターンは、参院選における制度の歪みを示したものにほかならない。現在の参議院の選挙制度は、人口が少ない農村的な地域の県が1人区、人口が多くより都市的な都道府県が複数区となっている。このような定数配分は、著しい不公平、不平等を生むため、民主主義の理念から外れたものである。
ただし、人口に応じて都市部の定数が多くなることは、「1票の格差」の是正という観点からは、むしろ適切なことだと受け止められるだろう。この問題を正しく理解するためには、2つの鍵が必要となる。
1つ目の鍵は、1人区と複数区、つまり小選挙区と中選挙区では、選挙結果の「比例性」が大きく異なる点である。比例性とは、簡単に言えば得票率と議席率の乖離の度合いである。小選挙区では1位の候補のみが当選するため、各党の得票率と議席率の差が大きくなり、中選挙区に比べて著しく比例性が低くなる。1人区では「勝者総取り」の選挙結果が、複数区ではより比例的な選挙結果が生じるのである。
2つ目の鍵となるのは、都道府県間の人口格差である。日本の都道府県は明治以来範囲が固定され、分割されていないため、工業化、経済成長で太平洋ベルトの都府県の人口規模が大きくなり、都道府県間の人口格差が著しくなっている。
人口格差の最大値は、1945年調査では北海道と鳥取県の6.2倍だったのに対し、最新の2015年調査の速報集計では東京都と鳥取県の23.6倍となっている。人口が多い都道府県は都市的で、人口の少ない県は農村的という明確な相関関係が生じているのである。
人口格差の拡大による「1票の格差」に対応するため、参院選挙区では定数是正がしばしば行われている。今回の選挙から宮城県、新潟県、長野県が1人区となり、複数区は北海道を除きすべて太平洋ベルト地帯の都府県に配されることとなった。