世にまかり通る保険の常識の数々。しかし、それを信じると思わぬ落とし穴に入り込むことに……。そんな実は「非常識」なことを保険のプロたちがつまびらかにする。
無料相談所
TVなどで保険の「無料相談所」の宣伝をよく見かける。しつこい生命保険会社のセールスレディーと違って、「相談所なら自分に合った保険を勧めてくれる」と考えてはいないだろうか。だとしたら、あなたは相談所にとって“いいカモ”になってしまう。
保険業界にくわしいコンサルタントのAさんは、こう警鐘を鳴らす。
「保険の相談が無料なだけで、ボランティアではありません。あくまでも、複数の保険会社の商品を扱う乗り合い保険代理店で“商売”なのです。保険代理店の経営は、成約した保険の手数料で成り立っています。お客さんさえ納得すれば、なるべく手数料が多く取れる保険を売り込もうとしてきます」
そんな相談所の典型例が「学資保険」に入ろうとして、「低解約(返戻金)型終身保険」を売り込むパターンだ。学資保険は、若い世代が主対象で、子供の教育資金を貯めるための積み立て型保険。一方、低解約型は保険料が安い代わりに、中途解約すると通常の終身保険の返戻金よりも減額される。
ある生保のプランで30歳の男性が60歳の払い込み満了で毎月1万9490円を支払ったときの累計保険料は701万6400円。その満了直後の解約返戻金は792万円なのだが、それ以前であると返戻金は3割減にダウン。満了のわずか1カ月前に解約せざるをえなくなった場合も同じであることを考えたら、空恐ろしくなる。
「学資保険は、若い人を引きつけるための目玉商品。手数料が少ないので、うまみがありません。そこで、巧みに低解約型へと誘導するのです」とAさんはいう。その手口を、相談所関係者であるBさんが明かしてくれた。
「たとえば、パンフレットの上のほうに一般の積み立て型保険、真ん中に低解約型、下のほうに学資保険の説明を載せます。名目上の利回りは、低解約型が最も高いので目を引くし、真ん中に載っている情報が、心理的に一番頭の中に残りやすいからなのです」
なかには保険を比較検討するため、懸命に“相談所巡り”をする人もいる。しかし、驚くなかれ、そこにも落とし穴が待ち構えているのだ。
「駅前に“看板”の違う相談所が並んでいても、実は、経営している会社が同じだったりします。どこの相談所に行っても同じ保険を勧められるので、かえって『この保険がベストに違いない』と、信じ込んでしまう人も少なくありません」(Bさん)
もし学資保険に入りたいのなら、相談所は“鬼門”と考えよう。