重い雪や火山灰用傘まで開発

ポケフラットは畳んだときに円筒形となる折り畳み傘の常識を破る平型で、薄さは最大2.5センチだ。バッグの隙間や背広の内ポケットにも入る。日本経済新聞主催「2004年日経優秀製品・サービス賞優秀賞」を受賞した。売れ筋としてはこの他に、全長わずか16センチという「スーパーポケミニ」がある。5段折りで、開けば標準サイズの50センチになる。

「試作では7段折りまで実現して、全長12センチというミニミニサイズも作りましたが、ちょっと折り畳みにくいので、商品化はしませんでした」と林。この常識にとらわれない商品作りが同社の真骨頂である。

また、極細タイプでは「ぺん細」という直径3.5センチ、重さ150グラムという女性に人気の折り畳み傘もある。これは、骨と骨とが重なり合う部分を入れ子状にして収納するというアイデアを林が生み出して完成した。これよりさらに細い「ファイブスター」は、なんと直径2.8センチ。骨の数を通常の6本から5本に減らす代わりに、丈夫なステンレス素材を使い、骨としての強度を持たせた。紫外線を90%カットするUV加工もしてあるので、日傘としても女性に人気だ。

ざっと紹介しただけでも、ウォーターフロントが一般的な折り畳み傘とは発想が根本的に違うことが分かるだろう。便利で価格もお手頃だから、売れるわけだ。

だが、林の発想はもっとユニークだ。富山県に行ったとき、地元の人から「富山の雪は重くて風も強いので、丈夫な傘がほしい」と聞くと、骨にFRP(繊維強化プラスチック)を使って強度を高めた「富山サンダー」を商品化した。

鹿児島では桜島の降灰に困っていると知ると、肩まですぽっと入るドーム型で透明の「桜島ファイヤー」を作った。この他、扇風機が内蔵された「扇風機傘」、傘の中棒を中心からずらして肩に背負ったバッグを雨から守る「バッグに優しい傘」、ステッキを傘の中棒に収納できる「ステッキ傘」、持ち手の部分がライフルの引き金型になっている「種子島」なんていう商品もある。林は傘の発明家といえるだろう。

こうしたユニーク商品と共に帝人フロンティアと共同で水をはじく新素材「ウォーターバリア」の開発も行っている。表面に蓮の葉のような微細な突起があり、空気の層が表面張力を生むので、水滴となって転がり落ち、生地が濡れないという優れた素材だ。UVカットも95%以上、遮熱効果もあり、劣化もしない。雨・晴れ兼用には最高の生地だ。

シューズセレクションのキャッチコピーは「晴れの日に傘を売る」。傘は雨の日のものという固定観念を打ち壊したことで、新たな傘の市場が生まれた。

「僕の野望は人類を傘から解放すること。要するに、毎朝、天気を気にしながら傘を持っていくかどうか決めるなんて、面倒なことをせずにいつもポケットやバッグに入れていても気にならないサイズの傘があればいいんです」