昔の予備校の英語は“ガラパゴス”状態だった

【三宅義和・イーオン社長】安河内哲也先生と言えば、英語教育者として、いま最も活躍されている方です。各種法人の理事や、大手予備校でのカリスマ講師、文部科学省や東京都などで英語教育関連の委員も務めながら、全国各地で「使える英語」の普及に奔走もしていらっしゃいます。睡眠時間は十分に取れているのですか?

安河内哲也・東進ハイスクール講師

【安河内哲也・東進ハイスクール講師】飛行機や新幹線をベッドだと思ってがんばっています(笑)。睡眠は細切れでもしっかりとるように心がけ、1日8時間は確保しています。健康を壊すと皆さんに迷惑をおかけしますからね。忙しいからこそ健康には留意しているつもりです。

【三宅】英語との出会いは普通に中学生からでしたか。やはり、英語は得意科目だったのでしょうか。上智大学の英語学科を卒業されていますが、どのような大学時代を過ごされたのでしょうか。

【安河内】小学校の6年生の時、近所にローマ字やフォニックス(音と文字の関係の規則性)を教えてくれる先生がいました。その教室に週1度、1時間ほどですが通っていました。そこにはゲームなども置いてあり、それが楽しみだったこともあって、中学校に入る前にアルファベットの大文字・小文字は書けました。中学と高校は、地元の公立に通いましたので、そこでも特別な英語教育を受けたわけではありません。英語もそれほど得意ではなかったですね。

高校では勉学よりも部活の登山に打ち込んでいました。そんなわけで、大学受験で思うような結果が出ずに、浪人しました。ところが、通った北九州の予備校に、ものすごく英語の上手な先生がいて、授業は基本的に音声中心の指導なんです。先生が話した英語をリピートする。それが面白くて、帰宅してからも、その日の授業を思い出し繰り返して発声していたぐらいです。それで英語力が一気に上がった気がします。

【三宅】それが、いまも流暢に英語を話させる秘密ですね。帰国子女でもなく、長期英語留学のご経験もないとお聞きしていましたので、国内でどのような英語学習をしてこられたのか興味を持っていました。

【安河内】ズバリ「音声中心の学習」でしたね。あたりまえのことですが、口を動かして練習しないと英語が話せるようになるはずはありません。上智大学時代には、只管朗読(しかんろうどく・音読を重視する英語勉強法の一つ)を提唱された國弘正雄先生の影響もあり、とにかく口を動かすのが私の英語学習法でした。

【三宅】卒業後は予備校の講師に就職をされて英語を教える立場になられたわけですが、教える側になって気づいた英語学習のコツのようなものはありますか。

【安河内】予備校の教壇に立つようになってビックリしたのが、私が通っていた北九州の予備校と正反対で、聞き取りや発音をまったく軽視しているという惨憺たる状況でした。まさにガラパゴス状態。それでも、自分が教わってきたやり方で授業を進めました。しかし「大学入試には必要ない」と周りの講師からはボロクソに言われました(笑)。

でも、生徒たちの成績は伸び、合格実績もよくなっているわけです。予備校の世界で、音声を使って英語を学ぶことの重要性を唱えて20年経ちますが、予備校でも、音声教育が見直されるようになり、少しは受験英語からの脱却に貢献できたかもしれません。しかしなお、この業界では日本語オンリーで活動ゼロの知識伝達型指導がまかり通ってますから、もっと音声指導の重要性を唱えなければと思っています。