出産後も働けるのは女性の約4割だけ
夫婦の家計は、妻の働き方によって大きな影響を受ける。子どもの出産を機に6割の女性が辞めてしまうが、一度キャリアを中断すると、生涯所得は最大で約2億円も減る。
子どものいる世帯のうち、母親が仕事をしていない「専業主婦」の世帯は全体の約4割を占める。「国民生活基礎調査の概況」(平成25年度版)によると、末子が児童(18歳未満の未婚者)の世帯のうち、「仕事なし」の母親は36.9%で、「仕事あり」は63.1%だった。「仕事あり」のうち、正社員は19.4%で、約8割は非正社員。母親の就労率は子どもの年齢が上がるほど高くなり、末子が高校生では77.1%にも達するが、その仕事の多くはパート・アルバイトだ。
非正社員の賃金は低い。「国民生活白書」(平成17年版)では、育児休業を取得して働き続けた場合と、出産・育児のために退職してパート・アルバイトに就いた場合での生涯所得を比較している。大卒者の平均で、前者は2億5737万円なのに対し、後者は4913万円にとどまる。これは前者では賃金カーブが年々上昇していくのに対し、後者では再就職しても年収120万円で固定されると仮定しているためだ。
家計を考えれば、妻が正社員として働き続けるメリットは大きいが、現実は厳しい。国立社会保障・人口問題研究所「第14回出生動向基本調査」(2010年)によると、子どもの出生年が2005~09年の女性では、出産前に仕事のあった女性のうち仕事を継続できている女性(継続就業率)は38%。つまり6割は仕事を辞めてしまう。
三菱UFJリサーチが08年に行ったアンケート調査では、「仕事と育児の両立が難しかった理由」として、最も多かった正社員の回答が「勤務時間があいそうもなかった(あわなかった)」(65.4%)で、次が「職場に両立を支援する雰囲気がなかった」(49.5%)だった。
安倍政権は2020年までに、38%の「継続就業率」を、55%に引き上げるという目標を掲げている。目標実現には、女性の「子育てへの負担」を軽減する必要がありそうだ。