侵食された土地は分筆して所有権移転

具体的な調整法は、土地だけの場合と建物も含む場合で異なる。

「農地や更地など何も建物がない土地なら、地割れを掘り返して整地の工事を行い、中間を取るなどして筆界境界を決め直せばいい場合もある。問題は、家などの構造物も一緒に移動したケースです。建物を壊して整地し直すのはコスト面で割に合わないので、普通はやりません」

では、家も一緒にズレたときはどうすればいいのか。調整案として多いのは、分筆したうえでの所有権の移転だ。

「地殻変動で、Aさんの土地が家ごと隣のBさん側に移動したとします。Bさんは侵食された土地だけを分筆して、Aさんに買ってもらうのです。地震で筆界境界を示す杭まで移動していると、Aさんは自分の家が隣にズレた自覚がないかもしれません。しかし、いまは人工衛星で基準点を計測しているので、もともとの位置からどれくらいズレたのかがかなりの精度でわかります。その資料を示すと、納得いただけることが多い」

お隣同士なので細かいことは言わずにそのままにしておこうという対応もあるだろう。ただ、代が変わって相続が発生すると、「親同士の取り決めなんて聞いていない」といってトラブルになることもありうる。お金が絡む大事な問題だからこそ先送りせず、決着をつけておきたいものだ。

(写真=朝日新聞社)
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