なぜ悪いこととは知りながら、妻以外の女性にひかれてしまうのか。浮気の誘惑を越え、夫婦関係をよくする方法を、全世界で5000万部を超えるパートナーシップ本の名著、『ベスト・パートナーになるために』を記したジョン・グレイ博士に聞いた。(聞き手:ファミリー・リレーションシップ専門コーチ 塚越悦子さん)

なぜ女はムダに話したがるのか

ジョン・グレイ博士。世界的な心理学者で、全世界で発行部数5000万部を超える『ベスト・パートナーになるために』の著者であり、コミュニケーション心理学の第一人者。人間の心理の本質に、最も精通した人物として知られる。表面的な感謝ではなく、人間の本質そのものに感謝できるようになる“究極の感謝”の体現者として、パートナーシップにおける最高のコミュニケーションを、世界中に伝え続けている。

【塚越悦子さん(以下、塚越)】私はこれまで、多くの国際結婚カップルの相談に乗ってきました。国際結婚のメリットの一つとして、「二人は違う」ことが最初から明らかだということがあると思うんです。

【ジョン・グレイ博士(以下、グレイ)】それには100%同意します。

【塚越】でも、相手が外国人だというような、分かりやすい違いがない場合には、ついお互い「親しいのだから同じ考え方をするはず」と思ってしまいますよね。これはどうしてなんでしょうか。

【グレイ】相手が違う国から来たことが分かっていれば、例えば自分が理解できない相手の言動に対しても「自分とは違う。どうしてだろう?」と好奇心を持つことができます。しかし、自分と似たような環境で育った相手は、同じような外見をして、同じ言葉を話すのだから、自分の発言の意図を分かるはずだろう、と期待してしまうんです。

【塚越】同じ人なんていないのに。

【グレイ】親子に関する冗談があります。「親は子どもに無条件の愛情を注ぐ――子どもが言葉を覚えて話し始めるまでは」(笑)。子どもが話し始めて、自分とは違う意見を言ったりすると、親は怒ってしまいがちですが、それが親子の愛情に満ちた交流の妨げとなってしまいます。「自分が知っていることを相手も知っているはずだ」とか、「相手も同じように考えているはずだ(そうするべきだ)」という期待感が邪魔をするのです。

【塚越】私も3人の男児の母なので、心当たりがあります……。

【グレイ】気を付けないとそうなってしまうものなのです。男女の例で考えてみましょう。男性が女性に「そんなに大げさに捉えなくてもいいじゃないか」と言ったとします。女性は「大げさになんて捉えていないわよ。ただ話したいだけ」と答えますが、それに対して男性は「大げさに捉えていないんだったら、それについて話す必要はないじゃないか」と答えます。これでは話がかみ合いません。

【塚越】これは男女間で「あるある」な話ですね。

【グレイ】女性が話したいのは、それによってパートナーとのつながりを感じて気分がよくなるからこそ、それよりもっと楽しいことを話したいと思うのですが、男性にはそのロジックは理解できません。でも女性にとっては、話すという行為自体が女性ホルモンを刺激し、ストレスを軽減する働きがあるんです。女性と男性の身体的な違いがあるので、女性にとって心地よいと感じる「話す」という行為が男性にとってはそうでないという状況があります。もちろんそうでない場合もありますが、基本的にほとんどの人は「男女にそこまでの違いがある」ということを理解していません。