漠然と厳しいことは認識していても「近くて遠い」存在、それが地方財政である。この地方財政に関して、2009年度から新しい制度が本格施行する。それが「地方財政健全化法」である。戦後の混乱期、財政悪化を立て直すため1955年に設けられた財政再建団体制度は、金融・経済が大きく変化する中で半世紀以上にわたり地方財政を規律してきたが、07年の北海道夕張市に対する財政再建団体化を最後に実質的な役割を終えた。

財政再建団体制度は、財政が極度に悪化しなければ機能しないなどの問題を抱えてきた。こうした点を改善するため、新しい健全化制度では地方財政の健康診断を早期に行い、住民と財政情報を共有、早めに財政が抱える病巣を治療することを目的としている。制度を機能させるには、地方自治体の財政運営の実態を踏まえ、何を将来の地方財政に求めていくかを考える必要がある。そのための問題提起と方向性を示してくれるのが『自治体破産』である。表面的な地方財政制度の解説ではなく、明示された制度の中でどんな権威や実力関係が暗黙に機能しているかを解き明かす。

地方財政、そして地方政治の実態は、日本の経済社会の構図の中で展開されている。その意味から日本の経済社会の構図を理解することも重要である。『日本の思想』は、戦後日本を代表する政治学者・丸山真男氏の代表作。鵺ぬえ社会と呼ばれる日本社会の実態、そして国と地方の関係を描き出している。第一に「実情」が共同体たる地方の習俗に根をおろしている限り、本来合理化=抽象化一般とは相いれないこと、第二に「制度」は既製品として各部門でバラバラに輸入され、制度化のプロセス抜きに実施されることが多く現実との間に悪循環を起こし、その「改善」は役人の機構いじりとなること、第三に、制度が「情実」に規制されて伸縮するので、尺度としての衡平をも果たしえなくなることが指摘されている。国と地方の政治・財政関係の中で展開される利益誘導の構図、それが鵺社会の中で機能している。

鵺社会、中央集権の構図を脱却し、少子高齢化、グローバル化、そして多様化する地域社会に対応できる新たな国の姿を模索する地方分権改革が展開されている。単に国と地方の行政関係を見直すだけではなく、議会改革を通じた立法分権、霞が関を頂点とする国家行政組織、民間業界団体の構図にも見直しを迫るものである。90年代後半に展開された第一次分権改革、そして07年スタートした第二次分権改革を通じてそこでの分権議論の全体像を教えてくれるのが2つの分権改革議論に参画している西尾勝氏による『地方分権改革』である。

そして、地方自治体が担う業務を実証的に整理し提言したのが穂坂邦夫氏の『地方自治自立へのシナリオ』である。穂坂氏はパートナーシップを基本に行政改革に取り組んだ埼玉県志木市の前市長である。地方分権、それは単に霞が関や官僚を批判することで実現する課題ではない。地方自治体、住民自らが地域と国の新たな姿を積極的に追求することで実現する。

『地方自治自立へのシナリオ』 穂坂邦夫監修 東洋<a class=経済新報社 本体価格3000円+税<br> 『地方分権改革』 西尾 勝著 東京大学出版会 本体価格2600円+税<br> 『日本の思想』 丸山真男著 岩波新書 本体価格700円+税<br> 『自治体破産』 白川一郎著 NHKブックス 本体価格1070円+税" src="https://president.ismcdn.jp/mwimgs/8/7/-/img_875941748e122a8801db5d2da85195b925396.jpg">