降格すれば給与も下がる厳しさ
今、サラリーマンの出世を取り巻く環境が劇的に変化しています。国内事業の縮小や業績不振を背景に管理職ポストが慢性的に不足している状態にあります。当然ながら会社は昇進者を絞り込むことになります。
大手不動産会社の人事課長は「リーマンショック前は昇進候補者のうち7~8割が昇進していたが、今年課長に昇進したのは2割。昨年の3割からさらに下がり、落胆している人も多い」と語ります。
同社の平均的な課長昇進年齢は38歳ですが、昇進適齢期を迎えても課長になれない社員が大量に滞留しているそうです。
もう一つの対策は降格制度の導入です。一定の成績以下の人を降格させ、若手を登用する。ポストの数は変わりませんが、昇進する人は増えます。しかし、昇進しても降格するリスクがあるので安心できません。IT企業の人事部長は「うちでは“入れ替え戦”と呼んでいる。たとえば部長が10人いれば、3人を上げて3人を降ろすというコントロールを頻繁にやっている」と言います。
じつはこの制度は業績不振の会社に限らず、好調企業でも導入されています。大手通信会社の人事部長は「管理職は約2000人いますが、毎回500人が昇進し、350人が降格している」と言います。もちろん、降格すれば給与も下がります。
降格した社員が再び課長の地位に返り咲く“敗者復活”の道も残されていますが、実際に浮上するのは難しいのが現実です。降格した社員の意欲が落ちないように人事部ではいろんな策を講じていますが、その一つが肩書だけは残すというものです。
大手電機メーカーでは、元部長に「○○部担当部長」という肩書を名刺に刷ることを許しています。その背景には「降格はしかたがないとしても、名刺から肩書がなくなるのは対外的に恥ずかしい。なんとかしてほしいという要望が多かった」(同社人事部長)という事情があります。
今のサラリーマンは課長になるのも大変ですが、たとえ昇進しても降格するかもしれないという厳しい環境に置かれています。
※本連載は書籍『人事部はここを見ている!』(溝上憲文著)からの抜粋です。