「優良企業分析」に足りなかったこと
また、超優良企業はコミュニケーションに力を入れている。例えば世界最大級のガラス製造メーカーであるコーニングは、新しいビルにエレベーターの代わりにエスカレーターを配置して、すれ違いざまに人と人が顔を合わせる機会を多くした。あるとき、私が先に挙げた8つの特徴に関して、スリーエムの経営幹部から物言いがあった。
「優良企業分析にはひとつだけ問題がある。それは9つ目の特徴としてコミュニケーションを挙げていないことだ。私たちは大量の書類や形式ばった手続きをやめにして、そのかわり互いにざっくばらんに頻繁に話し合うことにしています」
コミュニケーションには衝突もつきものだ。しかしそれを恐れてはいけない。歴史の教科書が400ページで、1ページに2人ずつ偉人が載っているとしよう。その800人のうち、1人たりとも「ノーマル」な人物はいない。彼らは何かを変えてやろうという情熱を持ち、戦いに勝った人々だ。そういった人は時にクレージーであると攻撃されることもある。周りの声に悩まされた者もいるだろうが、彼らは、自分がいい仕事をすることに集中した。
現実の会社においても、何かことを起こそうとすれば衝突することは避けられない。しかしお互いがよりよいものを生み出そうとしているならば、ぶつかったとしても、いずれは尊敬できる関係になる。上司だから、部下だからといって遠慮するのは愚かなことだ。
そして熱意が衰えたときにリーダーは素直に一線を退くべきだ。そうしなければ、いずれチームは信念を失い、挑戦する気概を失い、面白みのない製品しか生み出せなくなるだろう。逆にいつまでも熱意を失わない人もいる。今はフェイスブック社CEOのマーク・ザッカーバーグのように若い起業家がもてはやされているが、今までの統計で見ると、アメリカで起業する人々で一番多いのは45歳から64歳だ。私は72歳だが、22歳のときと表現の仕方は変わりこそすれ、情熱は失っていない。年齢と熱意は必ずしも相関しないのだ。(文中敬称略)
1942年、米国生まれ。コーネル大学土木工学学士号、修士号取得。スタンフォード大学経営学修士号、博士号取得。兵役、米国防総省を経て、74~81年、マッキンゼー・アンド・カンパニー勤務。国際経営学会、世界生産性協会、国際顧客サービス協会、品質・関与協会会員。
1998年、慶應義塾大学卒業。デロイトトーマツコンサルティング(現アビームコンサルティング)等を経てラーニングエッジ代表取締役社長。アンソニー・ロビンズの日本唯一のイベントパートナー。