「アロマセラピー」で認知機能が改善した

社交的でコミュニケーションが上手な人も認知症になりにくいという。外に出て多くの人と語り合うことで神経細胞が活性化されるのだ。また、適度な運動も神経細胞への刺激効果がある。つまりアクティブなタイプほど認知症になりにくい。

「ただ、ここで気をつけたいのは、こうした行動を楽しんで自発的にするということ。楽しくないことを無理にするのではストレスになり、逆効果になりかねません」

生活習慣では質のよい睡眠も重要になる。アミロイドβタンパクは昼間起きているときにつくられ、夜眠っているときに分解されるからだ。

このほか、認知症の進行を抑える療法には自分の人生を振り返り再評価する「回想法」、音楽に親しむ「音楽療法」、動物と触れ合う「アニマルセラピー」などがある。浦上教授が推奨するのは香りによって心身を癒す療法「アロマセラピー」だ。

「アルツハイマー型認知症では、脳の萎縮が順を追って進行します。初期には記憶を司る『海馬』が萎縮して記憶障害が起きるのですが、それより前に『嗅神経(きゅうしんけい)』の機能が低下することがわかっています。アミロイドβタンパクの蓄積も必ずここから始まるのです。つまりアロマの香りで嗅神経を活性化させることで最初の防御ができるわけです」

浦上教授が検証したところ、嗅神経を刺激する効果が最も高かったのがローズマリーカンファー、次がレモンだった。浦上教授がアルツハイマー型認知症の患者にアロマセラピーを実施したところ、1カ月後には認知機能が改善した。一方、アルツハイマー型認知症ではない認知症の患者では、効果は見られなかった。

生活習慣を見直しながら、早期発見に取り組めば、認知症は怖い病気ではない。正しい知識を身につけ、「国民病」に備えたい。