前回の「なぜ『傲慢なエリート』は時代遅れになったのか」(http://president.jp/articles/-/17869)では、鳥居正男社長の「謙虚という戦略」を紹介した。今回は、新刊『いばる上司はいずれ終わる』(プレジデント社)より、「ドイツまでの約12時間のフライトで一度も寝たことがない」という苛烈な働きぶりについて紹介しよう。
日々の仕事に毎日全力投球する
1885年にドイツで生まれたベーリンガーインゲルハイムは、医療用や一般用の医薬品、動物薬などを幅広く手がけるグローバル製薬企業です。
私が社長を務めるベーリンガーインゲルハイム ジャパンは、医療用医薬品を扱う日本ベーリンガーインゲルハイム、一般用医薬品を開発・販売するエスエス製薬、動物薬が専門のベーリンガーインゲルハイムベトメディカジャパン、そして医薬品の製造を担うベーリンガーインゲルハイム製薬の5社からなります。すべての法人を合わせると、社員数はほぼ3000人になります。
そう書くと私を外資系企業で成功した特別な才能や技術を持つ人間と思われる方もいるかもしれません。
しかし現実は違います。
謙遜でも何でもなく私自身は極めて普通の人間です。それゆえ日々の仕事に毎日全力投球しています。手を抜くなどあり得ないことです。100%ではなく、105%以上の力で働くと決めています。そして1日の終わりには自分の未熟さを反省する毎日を繰り返しています。
自分が特別な人間ではないと実感するのが、ベーリンガーインゲルハイムの各国の法人トップが集まるシニアリーダー会議の前。本音を言えば、いまも大勢での会議中に英語で発言するのがとても負担に感じられます。ドイツ本社で行われる年2回のシニアリーダー会議に出席するたび、英語でコミュニケーションを取ることの難しさを感じるのです。
外資系企業の経営者が何を言っているんだ、と呆れる人もいるかもしれません。しかし何度経験してもあの緊張感には慣れることはありません。