iPhoneのヒットも加わり加入者純増者数トップの座を維持しているソフトバンク。一方、他社の加入者獲得は厳しい状況が続いている。

2008年第1四半期決算において、トップシェアを持つNTTドコモの営業利益は、前年比45%増の2965億円となった。同社の携帯電話端末の販売台数は昨年に比べて2割減少。これによって販売代理店へ支払うインセンティブ(販売奨励金)が減り、利益額を押し上げる形となった。また、端末価格が高い代わりに月々の基本使用料が安くなる、いわゆる「分離プラン」を適用した契約者が9割超を占めたことも、コスト削減に繋がった。

最近回復しているように見える同社の純増者数には、実はトリックがある。7月の純増者数はソフトバンクに次いで2位となったが、そのうちの約7割は「2in1」の契約者。同社が07年5月より開始したこのサービスを契約すると、1台の電話で2つの番号を持つことができる。同社にとっては、端末1台で2回線分の契約がカウントされることになるのだ。

KDDIは大変苦戦している。(1)携帯端末の共同開発プラットフォーム「KCP+」が逆に足を引っ張った、(2)「分離プラン」へのシフトが遅れた。その結果、コスト削減効果が進まなかった。今年の秋冬、来年の春夏モデルで、魅力的な端末を発表できるかがカギとなる。加入者純増という点では、しばらく厳しい状況が続くだろう。

携帯電話事業が拡大の一途を辿る時代は終わった。通信会社にとって、中長期的に競争の焦点となるのは何か。

1つはFMC(固定通信と携帯通信を融合したサービス)への対応である。IPテレビをフックにして固定回線の銅線から光への置き換えを促す。そして、その光回線で、家で利用する携帯電話のトラヒックを運ぶ。NTTやKDDIが構築を進める新しいネットワーク(NGN)はFMCに対応する。

もう1つは認証・決済サービスなど通信以外の収入手段の開発だ。例えば、NTTドコモやKDDIが進める代金代行回収や金融関連事業がある。

ソフトバンクは目下のところ、固定回線の光化は眼中にない。果たして、これが勝負の分かれ目となるのか。この先注目されよう。