10月1日、松下電器産業はパナソニックへと社名変更を遂げた。業績への即時的な効果はないが、創業家との決別を宣言したことで会社の透明性を高める結果になったといえよう。

同社は、2001年度に創業以来の大赤字を計上して以来、事業ドメインの改革などを実施し、業績回復を果たした。だが、第2四半期以降、米国経済の減速による消費の冷え込みや、素材価格高騰の影響を受け、業績のモメンタムは悪化しつつある。ただし、コスト削減に対する飽くなき努力、北米販社を事業ドメインの傘下に置くなどの変更が奏功し、同業他社との相対比較では絶大な安心感を保持している。

国内普及率30%で利益率がピークアウト

国内普及率30%で利益率がピークアウト

今後の同社の課題は、ビジネスモデルをいかに変えるかだろう。大局的な見方をすれば、同社のビジネスモデルは、創業以来変わっていない。すなわち、成長事業(製品)が規模のメリットを創出、水道哲学の実践を通じてコストを下げ、他社を駆逐して利益を創出するというものだ。

これは、「国内普及率30%のジンクス」に表れている。主要製品の国内普及率が30%に達する局面で、営業利益率がピークアウトしているのだ。現在、成長を牽引する薄型テレビの国内普及率はすでに30%に到達、07年度の営業利益率が直近のピークとなるシナリオは徐々に現実味を帯びてきた。

プラズマテレビは、世界シェア40%を超え、圧倒的なコスト競争力を誇るが、韓国2社は液晶テレビに注力する戦略を採る可能性が高まっており、孤軍奮闘が続く。一方で液晶テレビの世界市場でのプレゼンスは十分でない。

ジンクスを破る鍵は、海外での白物家電の拡販など、次の成長ドライバーの育成だ。事業ドメインの再編による新しい製品やサービスの提供、資金力を活用したM&Aにも期待したい。

(構成=プレジデント編集部 図版作成=ライヴ・アート)