世界を大きな混乱に陥れた今回の金融危機だが、結論から言えば大きな峠は越え、方向としては収束に向かうと考えている。米国のみならず各国政府はドルの流動性確保に動き、個別行への資本注入に関しても、資本主義を捨てたのではないかと言われるほどまでに腹をくくったからだ。来年以降の日米経済の立ち直りに関してはかなり楽観的な見通しを立てている。

米大統領選はオバマ氏が制し、ようやくレームダック状態のブッシュ政権が終わりを告げ、早期に権力を移行しようと躍起だ。今のところはまさにシナリオ通りに事が運んでいる。

そもそも米国の国民性は楽観的。移民の国であり、成功者をたたえる風潮がある。他の国とは根本から違うのだ。マインド的にも立ち直りは早いだろう。

最大の火種、GMに代表される自動車産業の問題だが、オバマ氏の支持母体の民主党は労組と結びつきが強く、なんらかの手を打ってくると思われる。

翻って日本だが、昨今取り沙汰されている公的資金注入対象の拡大問題は、明らかに特定の地方や農林系金融機関を想定に置いた議論になっており、隠れた火種のまま終わってくれそうだ。大きな問題に発展するとは考えにくい。

株価の下落率が大きかったことは流動性の高さを証明した結果であって、誇りに思っていいことだと思う。きっちり換金できる市場、売りたいときに売れる市場というのがいかに重要であるか、今回の混乱で身にしみたはず。

トヨタの減益決算も相当なしたたかさを感じている。今は米国企業に圧勝していいときではない。在庫を一掃し、来年へのばねにする腹だろう。市場もわかっていて、翌日500円安と一時ストップ安をつけたものの、すぐに350円安まで戻した。一株利益ベースで考えると2000円は落ちなくてはならない減益幅であるにもかかわらず、だ。

何より忘れてはいけないのが原油価格の下落。ピーク時に1バレル148ドルまで上昇したWTIの原油価格は50ドル台をつける場面も。こうなると再びモノは動く。燃費の悪いSUVでも少しは売れるようになる可能性がある。

今は悲観論一色だが、結局米国の胃袋の大きさに頼らざるをえないことはデカップリング論崩壊で明らか。米国牽引による復活は意外に早そうだ。