「日米経済の立ち直りは早い」――。前号でそう予測を立てている一方で、欧州の混乱は長引きそうである。BIS(国際決済銀行)から公表されているデータを見ると、欧州系銀行は新興国、とりわけ南米向け融資の残高が大きい。かつてアルゼンチンがデフォルトを起こしたときのように、新興国の今後の状況によっては、近くのアメリカよりむしろ欧州に及ぼす影響のほうが怖い。公的資金注入により、大手銀行が潰れるような心配は当面ないであろう。だが、注入された資金が融資にまでまわらず、欧州の金融機関の収益拡大には結びつかない恐れが強い。
そのことを象徴的に表しているのが、今の為替相場の動きだと考えられる。円が強く、ドルが次いで、一番弱いのがユーロという現状に、そのあたりの状況が如実に出ている。
このことは、そもそもEUの躍進自体に疑念を持っていた私にとって少しも不思議な出来事ではない。なにしろ数百年にわたって戦争を繰り返してきて、その国民性も「昼寝時間につくられた車には乗るな」と言われる国と、ガチガチに頑丈な車をつくる国とが同居しているという、バラバラの組織だ。今回の金融危機が表面化した際にも、ECB(欧州中央銀行)の必死の音頭とりにもかかわらず、EU加盟各国の金融当局は足並みをそろえることができなかった。EU復権には時間がかかると言わざるをえない。
では、新たな世界経済の牽引役として、BRICsレポートに端を発した新興国ブームの潮流に乗った国々はどうだろうか。先日のG20金融サミットでもその存在感をアピールしていた中国、インド、ロシア、ブラジルといった国々だ。結論としてはインフラなどの諸条件からいって、彼らが主役に躍り出るのはしばらく先になりそうだ。この先世界一の人口を抱える国になるであろうインドでも、大国になるのには、まだ20~30年はかかる。
対照的に、米国は9.11でも表れたように団結すると強い国。今は経済危機下の大統領選を通じてまとまりを見せており、オバマ氏の当選はその象徴だ。新大統領の手腕を世界中が固唾を呑んで見守っているに違いない。米国への一極集中は今後も続いていくだろう。理想論と現実は違うのである。