海外現地スタッフも必ず来日させる理由
丸亀製麺は現在、中国とタイでは合弁会社をつくり、ほかに米国、ロシア、韓国、台湾、オーストラリアなどにも出店しており、海外の店舗数は100を超える。海外進出においても、製麺所方式は有利に働く。工場建設や流通整備が必要だと、絶対に失敗できないので、入念なマーケティングが必要になるし、複数軒同じタイミングで出店しなければ採算が合わない。丸亀製麺の場合、設備投資は店舗一軒分で済む。
「今後、丸亀製麺の海外における主戦場はアジアになるでしょう。もともと日本に対する好感度も高いですし、日本の食文化を歓迎してもらえる土壌がある」(粟田氏)
海外の店舗では「讃岐うどん」にこだわらず、現地に合わせたメニュー開発にも意欲的に取り組む。「トムヤムうどん」や「スパイシー豚骨うどん」など、日本人からすると「えっ」と思うようなメニューが、現地で人気だ。
もちろん、店舗だけ構えて、あとは現地スタッフ任せというわけではない。粟田社長が言うところの“優先順位”は、海外のスタッフ養成にも見てとることができる。トリドール海外事業推進プログラム部長補佐の福富弘員氏が説明してくれた。
「現地の店舗でキーマンになる方々には、数週間来日していただきます。座学では、オペレーションや衛生管理、日本のサービスマインドといった事柄に加え、うどんとはなんぞやといううんちく、空海が日本に伝えたんだというような歴史も話しますし、モチモチ感を科学的に説明したり、日本各地のうどんを紹介したりします」
さらには丸亀製麺が最重要視する製麺所のあり方そのものを学んでもらうため、1日で5、6軒の製麺所を回る弾丸ツアーも敢行する。現地向けに様々なアレンジを加えたとしても、ここで叩き込まれたイメージがあれば、ブランドの軸がぶれることはないと考えてのことだ。
昨年、トリドールは「10年後、世界外食企業ランキングトップ10入りを目指す」という目標を発表した。現在、日本でランク入りしているのはゼンショーホールディングスのみ。トリドールにとっては相当野心的な目標であり、言うまでもなく丸亀製麺ブランドだけで達成できるものではない。