昨年6月には、ヨーロッパのファストフードチェーン「ウォク・トゥ・ウォーク」を連結子会社化している。
「提供するのはスープヌードルではなく、フライヌードルですが、メニューを自分でカスタマイズして注文し、店員が目の前で作ってくれる。ある意味、丸亀製麺と同じです」(粟田氏)
今年2月には、マレーシアの人気ヌードルチェーンをグループ化した。
「もともとタイの水上マーケットで働く人たちに向けて、ボートで売り歩いていたというのがルーツです。お客様の目の前で調理するという点で、私たちと同じ価値観を持っている。そんな相互理解が得られるパートナーを探していきたい」
そう語ったのは執行役員経営企画室長の小林寛之氏。この発言からもトリドール哲学の一貫性が窺える。新たな業態の自社開発や現地企業のグループ化により、着実に拡大していくトリドール。「世界6000店舗、売り上げ5000億円」という目標は達成されるか。外食産業に詳しい、いちよし経済研究所アナリストの鮫島誠一郎氏はこう指摘する。
「うどんだけで1000店舗を達成したのち、さらに国内で展開するのはかなり厳しい。東南アジアに飛び込んだのはいい判断ですね。昔から市場や屋台が発展していて、そこで食事を取ることは一般的だし、今後は中流階級も増えてくる。しかし、それ以上に重要なのは、米国でしょう」
日本のファストフードは最大手で1000店規模だが、米国は1万店規模と、まさに桁が違う。世界の外食チェーントップ10を見ても、日本人になじみの薄い名前が交じっているが、それらは米国で大きな売り上げを誇る。
「すでに吉野家が米国で100店舗を達成していますが、米国出店のためには、各種免許が必要であったり、住民への説明が求められたり、日本よりもハードルが高い。実際、日本企業も米国での出店は予定より1年ほど遅れることが多いんです。そこで重要なのは『時間を金で買う』ということ。自分たちで一から店舗をつくるより、買ったほうがはるかに早くなります」(鮫島氏)
実演性が高く、非効率な部分にこそ心血を注ぐ。そんな丸亀製麺に通じる精神を持つパートナーと、米国でもめぐり合うことができるか。トリドールが世界企業に躍進できるかは、そのあたりに鍵がありそうだ。