甘やかしても子供は育つ。大切なのは親の姿

もう1つ大事にしていたことが、家族が集まるリビングでは、リラックスできるようにすることです。私は指導者ですが、家では体操の話は一切しないようにしました。そして、テレビのチャンネル権も子供に全面的に譲り、小言も言わないように気をつけました。顔を合わせると、心配からつい小言を言いたくなるのが親心ですが、それではリビングが“説教部屋”になってしまいます。自分の部屋にこもって、リビングに出てこなくなるでしょう。

わが家では、子供部屋はベッドと机だけという簡素さだったこともあって、子供たちはリビングで過ごす時間が長かったです。今は皆巣立ってしまいましたが、思い返してみると健三はよくソファに横たわって、ダラダラしていました(笑)。脱いだ服は脱ぎっぱなし。食事をしても食器はそのまんま。何の文句も言わずにそれらのフォローをするのは妻です。

実は、健三があまりにもリラックスしすぎていたので、あるとき、妻に「ちょっと過保護すぎないか」と聞きました。すると、妻はきっぱり「健三は、私たちが育てる最後の子だから、悔いがないようやってやりたい。甘やかしていると言われても構わない」と言ったのです。子供たちは外で懸命に戦ってきているのだから、せめて家の中では休ませてやりたい。妻はブレずにその考えを貫き通しました。

こうして家ではまったく手伝いをさせなかった健三ですが、大学で寮生活が始まると、人づてに思わぬ話を聞きました。健三がいると、寮がキレイに片付くというのです。料理も完璧にやっているそうです。

健三は、子供の頃から体操も見よう見まねでできてしまうところがありました。家事も、どうやらその観察眼を発揮し、マスターしたようなのです。妻が仕事をしながら、家事も完璧にこなす姿を見ていたというわけです。

大切なのは、親が自分の後ろ姿を見せること。そのことをあらためて感じる出来事でした。

白井勝晃
鶴見総合体育研究所代表。息子で、体操選手として活躍する白井勝太郎・晃二郎・健三選手をはじめ、数々のトップアスリートを育てた。日本体操協会功労賞ほか受賞多数。著書に『子どもに夢を叶えさせる方法』がある。