堺屋太一、竹村健一、長谷川慶太郎……

また國貞氏によれば、多くの中小企業の社長も実用書派だ。だいたいがたたき上げでリアリストのため、ビジネス理論書を「所詮、机上の空論だろう」と見くびる気質が強いという。それよりも株式投資の参考にしたり、トレンドをつかもうとする意欲から、市場に関する記事が載っている新聞や週刊誌を斜め読みし、経済予測の本を愛読する。

好きな評論家は、堺屋太一、竹村健一、長谷川慶太郎などで、占い本をめくって一喜一憂、自己啓発本で励まされることも少なくない。

そして、実用書よりもさらに深い知識を求めて、人文系の本を好む経営者も数多く存在する。

15歳で『竜馬がゆく』に感銘を受け、アメリカに留学したのが孫正義氏。起業後、病気を患って入退院を繰り返していた3年間で、秦の始皇帝、ナポレオンの歴史書にも目を通し、数千冊の本を読破した。

ソフトバンク社長 孫正義氏(写真=時事通信フォト)

マネックス証券CEOの松本大氏は、愛読書が16世紀のフランスの思想家・モンテーニュの『エセー』。「あらゆる人間が抱える、あらゆる問題や悩みに対する答えが書かれている」と絶賛し、枕元に置いているほどだ。

リクシル会長の潮田洋一郎氏も教養人で、江戸時代の文人である『大田南畝全集』や、新井白石の研究書『西洋紀聞』などをおすすめの本に挙げる。古代ローマの政治家・キケローが書いた『老年について』も愛読し、「大学時代にラテン語を学んだのは、キケローを原書で読むため」と語るのだから、恐れ入る。