ハワイアンズの運営企業、常磐興産社長を3年前から務めるのが元みずほ行員の井上直美だ。地元出身者が代々社長を務める福島県の老舗企業で、縁もゆかりもない彼は、どうやって会社を変えたのか。

2006年に大ヒットした映画『フラガール』の舞台、福島県いわき市にあるスパリゾートハワイアンズ。摂氏28度に保たれた館内に突如、スチールギターの音色が響きわたる。フラガールの実演の始まりだ。師走の平日、時刻は12時半を回ったところだ。やがてホテルハワイアンズの玄関前に無料送迎バスが到着し、続々と客が入ってくる。

「アロハー、いらっしゃいませー!」

腰蓑とパイナップルの被り物を身に着けた恰幅のいい男性が、手の親指と小指を立てて振る「シャカブラ」と呼ばれるハワイのポーズで迎える。そこに並ぶオリジナルキャラクター「CoCoネェさん」の着ぐるみと、ハワイの民族衣装のムームーを身にまとった細身の女性が、館内へと客を誘導。やがて13時半から始まるショーを観るため、ビーチシアターのある「ウォーターパーク」に急ぐ一団と、フロントでチェックインし部屋に向かう客とに分かれていく。

(上)到着したお客をウエルカムスタイルで迎える、宿泊統轄支配人の郡司昌弘とゆるキャラCoCoネェさん。(左下)ハワイアンズを代表するプール施設「ウォーターパーク」。右奥が、フラガール・ショーが行われる「ポリネシアン・グランドステージ」。(右下)フラガール・サブリーダーの工藤むつみさん(右)と若手ダンサーの須藤水貴さん(左)。

「このウエルカムスタイルは、今の社長が始めたものです。その前は私、制服でお辞儀をしながら迎えていました。あの頃にこんな格好をしたら『アイツ、頭がどうかしたんじゃないか』と言われたでしょう」

照れながら話すのは、敷地内にある複数の宿泊施設を束ねて管理する宿泊統轄支配人、郡司昌弘(55歳)。腰蓑姿で客を迎えていた男性だ。