「同期よりも出世」では評価も満足も得られない
キャリア形成のパターンは、ここで紹介した4つだけではありません。仕事に対する意識や価値観は多様化しており、キャリアの成功については人の数だけ定義があるといっても過言ではないでしょう。小さく定義してしまうべきではありません。
キャリアの担い手が個人に移行しつつあるなかで、納得できる評価を得るためには、「キャリアの再探索」が重要になります。ポイントは「自己の探索」と「環境の探索」です。
自己の探索とは、自分の能力や実績を客観的に抽出する作業です。その際、自分ひとりで行うのではなく、家族や友人、もしくはキャリアカウンセラーなど他者の視点を交えるといいでしょう。本人は気づかなくとも、周囲からみると卓越した能力をもっている、ということも少なくないからです。
環境の探索とは、社内外での人脈や現在の部署や会社などを捉え直すことです。自分がいまもっているコネクションを、未来にどうつなげられるか。転職や異動、社内プロジェクトへの参加など、別の環境に自分を置けないかを試みるのです。
キャリア探索は誰でも、学校から社会に移行する際、つまり新卒時の就職活動で一度行いますが、その探索が一度きりで終わりなのは、「階層的キャリア」だけ。他のキャリアパターンにおいては、キャリアの再探索を二度三度と求められます。
キャリアの再探索を行った結果、いまの会社で納得する評価が得られる見込みがないのであれば、社外に別の評価者を求める――つまり転職や独立もひとつの方法でしょう。
これまで主流だった「階層的キャリア」では、現状の組織でどれだけ生き残れるか、どれだけ他者の競争に勝つかがキャリア形成の主軸でした。しかしパターンは多様化しています。会社の外に新しい物差しを発見し、自分の能力を測り直すことで、新しい評価を得ることもできるはずです。他者をうらやむよりも、自身のキャリアを再探索してみることも大切でしょう。
2003年名古屋大学大学院国際開発研究科博士課程修了(博士〈学術〉)。その後、独立行政法人・日本学術振興会特別研究員(SPD)、東京理科大学経営学部准教授、青山学院大学大学院経営学研究科(戦略経営・知的財産権プログラム)准教授等を経て、2012年より現職。専門は組織行動学・人材マネジメント論。