社員が視線をそらしたときは

相手を変化させるというコミュニケーションの目的がクリアになると、話し方そのものは大した問題ではなくなります。大事なのは「どう伝えるか」より「どうしたら伝わるか」です。

一般にコミュニケーションにおいては、ロジカルであることや、よどみなく話すことが大切だと思われがちですが、それは本質的ではありません。エモーショナルだろうが、とつとつとした語り口だろうが、目的が達成できればいいのです。

むしろ心がけるべきことは、目の前の相手をよく観察し、自分の話がどの程度理解されているのかを、話しながら正しく評価・分析することでしょう。そうしながら、いろいろなところにボールを投げて、その反応を見て興味や関心のあるところを探り、そこから話を展開すると、うまくいく確率は確実に高くなります。これは1対1の場合だけでなく、大勢の人を前に話すときも同じです。

当社では、月に1度、社長の私が社員の前で話す全体会があります。そのとき私が気をつけているのは、社員の表情や仕草の変化です。話が理解されていないときは、社員の顔が下を向くのですぐにわかります。私と目を合わせないか、目が合うとスッと視線を外す人は、会社や私に不信を抱いているのかもしれません。会場を見渡して、そういう人が一定数以上目についたら、こちら側になにかしらの問題があると思って、話の内容を変更するなどの対策を立てるようにしています。

困るのは、株主総会や講演会などで、演台に当たるライトがまぶしすぎて聴衆の顔が見えないとき。フィードバックが得られないため、聞き手の反応に応じて話を臨機応変に変えることができないからです。