【田原】帰国後、マネーフォワードの原型のようなサービスをマネックスでやろうとしたそうですね。どんなものだったのか、説明していただけますか。
【辻】簡単にいうと、フェイスブックのお金版です。人が株を売買して儲けたとか、住宅ローンを借り換えて得をしたというような情報をソーシャル上でオープンにして、みんなでシェアするサービスですね。そうした情報を共有できると、自分より上手に資産運用している人の株の売買履歴を見たりして、自分も参考にできます。
【田原】株の売買までわかると、プライバシーがバレませんか。
【辻】そうなんです。だから失敗しました(笑)。匿名のサービスでしたが、情報をオープンにしていると、やはり不安だったみたいです。その失敗を活かして、マネーフォワードは自分しか見られないクローズドのサービスに変えました。
【田原】クローズドの新サービスはマネックスの新事業ではなく、独立してやられましたね。どうして社内でやらなかったのですか。
【辻】私が新しいサービスを提案したのはリーマンショック後で、マネックスの業績が厳しい時期だったのです。会社として新規投資するタイミングではなかったし、私も当時は営業の責任者で、新規事業をやる余裕を持てませんでした。それで最終的に、会社を出てやりますと。
【田原】立ち上げの資金は、どうされたのですか。
【辻】初めは自己資金です。自己資金だけでは続かないのですが、ありがたいことに松本さんが出資してくださって、1年間くらいは事業を続けていく余裕ができました。余裕ができたといっても、私たちはほぼ無給、オフィスも高田馬場のワンルームでしたが。