銀行との違いはエンジニアの質

【田原】うまく回り始めたのは、いつごろでしょう。

【辻】1年後くらいには、ユーザーが110万~120万人まで増えてました。じつはスマートフォンでお金のアプリを出したのは私たちが最初。スマートフォンが伸びた波にうまく乗れたのはラッキーでした。法人向けのほうも、クラウド化の波に乗れた。ユーザーが増えるにつれて資金調達もしやすくなって、現時点では約38億円の資本金を集めるところまできています。

【田原】マネーフォワードのライバルはどこですか。銀行とか証券会社は競合になるサービスをつくりそうだけど。

【辻】じつは銀行は昔から似たようなサービスをやっていました。ただ、銀行さんがやっても、みなさん信用しなかったんですよね。銀行は、金融商品を自分で販売しています。だからユーザーは資産状況を把握されると、何か売りつけられるんじゃないかと不安になってしまう。

【田原】最近はあまりないけど、たしかに以前は僕のところにも銀行の人がやってきて不動産をすすめられました。辻さんのところだと、そういう心配はないと。

【辻】僕らはモノを売らないので、完全に中立的な立場です。あと、銀行さんのつくったツールは、ユーザー目線に欠けていて使いづらいところもあった。そこも私たちのサービスとは差があると思います。

【田原】どうして銀行が便利なツールをつくれなくて、辻さんのところがつくれるのですか。

【辻】いまは優秀なエンジニアチームがユーザーの意見を聞きながらツールを絶えず進化させていく時代ですから、人の差が大きいのではないでしょうか。うちはいま従業員100人超ですが、半分がエンジニアやクリエイターで、彼らはひたすらサービスをつくっています。そういった体制を銀行さんがつくるのは難しいので、最近は私たちと提携してツールの提供を受けるという流れになっています。

【田原】ツールをつくるライバルはいないのですか。

【辻】いくつかあります。ただ、まだライバルという感じではないです。このサービスをやるうえでもっとも重要なのはセキュリティ。そこをきちんとつくれるのかというところが大きいので。

【田原】今後、海外展開は考えていらっしゃいますか。

【辻】いまはまず国内で、個人向けと中小企業向け両方でナンバーワンを取ろうという段階です。目標は個人向け1000万ユーザー、中小企業向け300万ユーザー。そこまで行ったら、次はアジアかなと。すでに並行して、香港、シンガポール、インドネシアあたりは調査を始めています。できれば2016年度中に具体的なアクションを起こせればいいなと考えています。