リニューアルは皆にメリット、唯一の例外は……

ETSがなぜこのタイミングでリニューアルに踏み切ったのかは知る由もないけれど(前のリニューアルから10年の節目だから?)、そのモチベーションはかなり純粋だと見ています。「もっといいテストを作りたい」「受験者の能力をより正確に判定するテストにしたい」という思いがあってのことだと信じています。

事実、TOEICは完璧なテストではなく、やはり「聞く・読む」の2技能テストには限界もあります。本当に英語力があるかどうかを判定するには、書かせる、読ませる、それに10分間程度の面接もやらなきゃならない。でもそれだと、年間約700万人が手頃な受験料で同じテストを受け、公平なスコアを与えるのは不可能です。

前回改訂から現在までにTOEICの関連書籍はおよそ1300タイトルも出版されている。どのタイミングで“新形式対応版”を出すべきか、TOEIC本著者と出版社にとっては非常に悩ましい問題だ。

そういう意味では、TOEICはMass-Test(大規模テスト)としてはベストに近いものを作っていて、今回のリニューアルはそれをさらにブラッシュアップしていこうという試みです。恐らく成功するでしょう。

ETSやIIBCはますます多くの支持を獲得し、受験者は質の高いテストが受けられ、出版社は新しい本が売れてビジネスを拡大する。このリニューアルは皆にメリットがあるのです。デメリットを被るのは誰かって? それはこれまで一生懸命作った著書が“型遅れ”の扱いをされ、新装版の締め切りに追われる私のような人間ですよ。Oh,my……。

(山本祐之=撮影(ヒルキ氏、本) 朝日新聞社=写真(TOEIC受験、ETS))
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