マイナーチェンジは数年前から徐々に始まっていた

実際、ETSは昨年あたりから、パイロット・テスト(試作テスト)を繰り返していた。あるいは、カムフラージュしながら、新形式の問題を入れてきています。わかりやすい例で言えば、「チャット形式の会話文問題」などは、昨年暮れのテストに出ていました。

(上)米国ニュージャージー州プリンストンにあるETS(Educational Testing Service)本部。(下)企業や学校で実施される団体受験「TOEIC IPテスト」は来年3月まで従来形式で継続される。(朝日新聞社=写真)

ETSはマイナーなリニューアルはずいぶん前からやっています。例えば、パート6にはCDQ(文脈依存型問題)がありますが、当初は12問中4問程度だったのが、最近は7~8問も出るようになりました。CDQは空白の前後を見るだけでは正解の選択肢を選べない。全体を読んで、文章を正しく理解する必要があります。

「最近のTOEICは難しくなっている」と感じている人は多いと思いますが、それはこういうところを微妙に変えているからです。一方で、パート6の長文は、以前は1文が120~125ワードもあったのに、最近はときどき57~70ワードのこともある。そうでもしないと、多くの受験者が解き切れないからでしょう。

実はここに、新形式の傾向を予測できるヒントもある。例えばパート7には新たに「マルチプルパッセージ」が加わり、3つの文章を読まなければいけなくなりますが、語数で調整し全体の負担は従来とそれほど変わらないと思う。

問題作成者の立場で考えると、パート3の「3人による会話」などは設問が作りにくい。登場人物の組み合わせは「男2人と女1人」か「女2人と男1人」のどちらか。同性の意見や行動が同じなら従来通りWhat is the man's problem?(男性の問題は何ですか)やWhat will the woman do next?(女性は次に何をしますか)と問えるが、違っている場合には!?

恐らく当初は男女が聞き分けられれば答えられる(つまり従来と同じ負担の)設問にして、受験者の反応を探ってイケそうなら、3人が名前を呼び合うなどして聞き分けさせるとかがあるかもしれない。つまり、リニューアル後にも難易度をコントロールできる余地がたくさんあるということです。

1年くらいはクオリティが揺れ動く可能性がありますが、団体受験の「IPテスト」は来年の3月まで従来の出題形式が継続されます。今、出ている本のテクニックが引き続き有効(手前味噌ですが私の『新TOEICテスト直前の技術』はかなりいい本です)なので、どうしてもスコアが必要な人はこちらもチャレンジすることをおすすめします。探せば、一般の人でも受験できるところがあるはずですよ。