飲食店経営における3つの役割
外食産業に関する仕事をしていると、異業種の方から「実は飲食店をやろうかと計画しているんですよ」という相談を持ちかけられることがしばしばあります。理由はたいてい「昔から食べたり飲んだりするのが好き」であり、かつ「本業が好調で資金的な余裕もある」からです。そんなとき、相談者がよほど飲食店に思い入れがあったり、素晴らしいアイディアを持っていたりするのでもない限りは、「やめたほうがいいですよ」と私は回答しています。
その理由を考えていくうえでは、「飲食店経営」をざっくりと3つの機能にわけることで、落とし穴が見えやすくなります。ここでいう3つの機能とは「所有(投資)」と「開発」と「運営」です。
「所有」とは、開業に必要な資金を調達して、実際に株主や事業主の立場に立つことです。要するに、金銭的なリスクを取るということです。「開発」とは物件を探し出したり、業態や商品をつくりあげたりすることです。マーケティング的な意味あいが強いと言えるでしょう。そして「運営」は、従業員を雇用して日々お店を切り盛りしていくことです。業務内容としてはいわゆる営業に当たります。
一見小難しく書いているようですが、多くの飲食店では一人の店主や社長が、これらすべてに責任を持って取り組んでいることが普通です。一方、機能を切り分けているケースで一番わかりやすいのはフランチャイズ形式でしょう。フランチャイズでは本部(フランチャイザー)は開発機能のみに特化し、所有と運営は加盟店(フランチャイジー)に委ねられます。