「とうちゃん、かあちゃん経営」が500万円払えるか?

▼零細企業は法定福利費が135万円アップ

その「従業員3人」の零細企業がもし、社会保険に加入したら、いくらぐらい経費が増えるのだろうか? 会社負担分の社会保険料は、年収の約15%である。1人あたり「平均年収300万円×保険料率0.3×事業主負担分0.5」=45万円で、この3人分だから135万円。事業所としては、毎年135万円の法定福利費が新規に発生することになる。

さらに、社会保険に加入すると従業員の給与の手取りが減るため、事業主はその保障分を一部“補てん”することもある。そうなると、さらなるコストアップにつながる。

▼会計検査院は「過去2年分」徴収できる

マイナンバーの導入後、会計検査院など当該官庁はそのデータを元に未加入企業の摘発に乗り出すと思われる。ルール上は、過去2年分の支払いを命じることができる(それ以前は時効扱い)。

ここで問題となってきそうなのは、従業員負担分の扱いだ。それは本来従業員が負担するべきものだが、今さら払えとは言いにくいもので、事業所側が全額を負担するケースが多い。そうなると過去2年分の保険料の総額はこうなる。「平均年収300万円×保険料率0.3×従業員3人×2年分=540万円」。

500万円以上……。零細企業の社長が真っ青になっている顔が想像されるだろう。この金額は、零細企業にとっては死活問題だ。もし、会計検査院などが本腰を入れたら零細企業は“壊滅的”な打撃を受け、おそらく自主廃業ができるのは良い方で、自己破産に追い込まれるところが少なくないのではないか。

全国に75万カ所もある零細企業の中で、どれだけが破綻に追い込まれるのか予想もできないが、大きな影響が出ることは確実だ。零細企業が破産すれば、連鎖倒産を誘発するリスクが出てくるし、雇用不安や求人率の低下も起きかねない。

「社会保険に加入するのは、もともと法で定められた義務であり、守っていない方がおかしい」

確かにそうした意見は、正論である。しかしながら、世に与える影響があまりにも大きすぎるのだ。

政府がマイナンバーを武器に「社会保険料の未納問題」の解決を急ぐと、結果として街から零細企業が減り、例えば食品スーパーなどが姿を消してしまうのではないか? それによってすでに一部で問題化している“買い物難民”が増えるのではないか。そんな危惧を私は抱いている。

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