要約は、文章を単に短くすることではない。相手が望む情報を、相手が望むボリュームで的確かつ簡潔にまとめる究極の技術である。

要点上手は、ビジネス上手

要領よく要点をまとめる能力はビジネススキルの1つだと、よく言われる。要点をまとめるのが上手な人と、いつも要領を得ない文章を書く人がいたとする。どちらと商談をしたいかといえば断然、前者だろう。

要点をまとめるのがヘタな人が相手だと、余計なやりとりが増える分時間もかかるし、誤解によるトラブルが生じるリスクも高まる。

では、要点をまとめるのがうまい人とヘタな人は何が違うのか。ネットニュース編集者の中川淳一郎さんは、次のように解説する。

「一言で言うと『相手の興味関心に沿う意思があるかどうか』です。要点をまとめるのがうまい人は相手の意向を重視する。相手が欲しい情報を、相手が理解しやすい形で伝えようと工夫しています」

要領を得ない人の多くは、相手の気持ちや状況はお構いなし。結果、自分の都合を押し付けることになり、より一層伝わりづらくなるという。

「要約というと、テクニカルなイメージを抱いている人が少なくありません。でも、どんなに素晴らしい要約も、相手が求めている情報とかけ離れていたら評価されません」

たとえば、ネットニュースの世界では「短い文章が好まれる」とよく言われる。しかし、当然ながら、単に短いだけではアクセスは稼げない。ネットユーザーが好む話題を、好む文脈に沿って短くまとめるからこそ、アクセスにつながるのだとか。

では、どうすれば相手が欲している情報を知ることができるのだろうか。

「まずは想像を巡らせる習慣をつけることが最初の一歩です。

たとえば、雑談のなかで『最近面白いニュースない?』と聞かれたら、相手の意図を考えてみる。一般的には会話のきっかけ程度。であれば、中身よりも迅速さを重視するのが正解でしょう」

一方、同じようなフレーズであっても、相手や場面が変われば、意図も変わる。

「来年度の契約を左右するような場面で思いつきを口にするのはあまりにも軽率です。『瞬発力がなくてすみません!』と頭を下げ、じっくり検討したうえで提案するのが得策です」

いずれにしても、要約には戦略が不可欠だと肝に銘じたい。