目標は“アジアの首都”ピーチの挑戦は続く
LCC元年とうたわれた12年。ほぼ同時期に就航を開始したピーチ、ジェットスター、エアアジア3社の中で、どこが生き残るか。航空業界に詳しいジャーナリストや評論家の間で最も下馬評が低かったのはピーチだ。全日空の出資は受けながらも連結の対象ではなく、実質的にはどこからも支援を受けていないピーチは、LCCの豊富なノウハウがベースにある他の2社と比べると前途多難。そんな大方の予想を覆して、ピーチは上昇気流に乗った。
「3年目に単年度黒字化できたとき、自信がつきましたね。誰もが否定的だったハイコストな国のローコストなモデルを実際につくれたんだから。これから目指すのは、まず運航品質をライアンエアー並みにアップすること。それから、大阪をアジアの首都にしたい。タイ、ベトナム、インドネシアも視野にある。でも直行便は黒字化が難しいから、沖縄からの乗り継ぎでいいんじゃないのかな。ピーチは『空飛ぶ電車』。電車はみんな乗り継いで利用するでしょう?」(井上)
勇気をふるい、プライドの持ち方を変えれば、旧弊な体質が色濃く残る航空業界でもこれだけのイノベーションが可能なのだ。アジアの空をピンク色で染め上げそうな勢いで邁進するピーチの軌道は、日本にもまだまだイノベーションの可能性があることを示唆している。
(文中敬称略)
ピーチ・アビエーション代表取締役CEO 井上慎一
1958年、神奈川県生まれ。三菱重工業を経て、90年全日本空輸入社。北京支店総務ディレクター、アジア戦略室長、LCC共同事業準備室長を歴任。2011年、A&Fアビエーション(現ピーチ・アビエーション)CEO就任。
1958年、神奈川県生まれ。三菱重工業を経て、90年全日本空輸入社。北京支店総務ディレクター、アジア戦略室長、LCC共同事業準備室長を歴任。2011年、A&Fアビエーション(現ピーチ・アビエーション)CEO就任。
(向井 渉、山本さとる=撮影)