出世する人間は例外なく感じが悪い

「愛されるより、恐れられよ」。この真実は、マキャヴェリの時代から変わることがない。日本でもベストセラーとなった私の著書『「権力」を握る人の法則』では、どうすればあなたも権力を握ることができるのか、なぜ権力を握る人たちが必ずしもいい人とは限らないのかを解析している。

スタンフォード大学ビジネススクール教授 ジェフリー・フェファー氏(写真=AP/AFLO)

洋の東西を問わず、家庭や学校教育の問題は、「世の中はかくあるべき」、あるいは「人間はこうであるべき」という理想論を掲げるだけで、「実際の世の中の仕組み」「実世界における人間の正体」を教えていないことにある。

会社で出世する人間は例外なく感じが悪い。私は権力を握るための術として、日本のみなさんに3つの行いをご紹介したい。

1つ目は「怒りを示す」ことだ。ただし、1つ付け加えておきたい。「怒りを示す」と「本当に怒る」は違うということだ。本当に怒ってしまうと、戦略的に考え、反応する力がなくなってしまう。あくまで、怒るふりをすることが大切なのだ。大多数の人間は争いごとを避けたがるので、あなたが怒りを示した時点で引き下がるものだ。

もっとも、あなたが周囲の注目を集め、存在を認められる存在ならわざわざ怒る必要はない。あなたの訴えや主張を相手に真剣に考えさせたいときこそ怒りを示すのだ。

2つ目は「相手の話をさえぎる」ことだ。会話の最中に相手の話をさえぎるのは、まったく礼を失した行為であるが、それでも相手に自分の力を感じさせ、力関係を自分に有利に導けるのは間違いない。多くの研究者が会話分析と呼ばれる手法でこの点を実証している。いつさえぎるべきかについては、時と場合によるとしか言いようがないが、1つだけ確かなのは、決して誰にもあなたの話をさえぎらせてはならないということだ。話をさえぎられるということは、あなたに力がない証しだ。

3つ目は「前提条件に疑問をつける」こと。ビジネスの場を例に考えてみよう。多くの企業では、市場原理は当然の前提とされている。こうした前提に異議を唱えれば、力を誇示することができる。当社の競争戦略はこれでいいのか、成功の尺度はこれでいいのか。当社の本当のライバルはどこなのか――。それまで常識とされてきたことを疑ってかかり、大前提の再検討を促す人物は注意を引き、それが妥当であれば一目置かれるようになるのだ。

誰もが暗黙のうちに了解していることとして、権力者は怒り、他人の話をさえぎることが許され、規則を破ることや一般常識から外れることも許されるというものがある。ということは逆もまた真で、あなたが怒りを示し、他人の話をさえぎり、前提条件に疑問をつきつけて自分に都合のよい基準をつくり、社会的規範を破れば周囲はあなたを権力者と見なし、従うようになるということだ。