募集を停止した法科大学院は29校
そして、もう1つ今年の新司法試験で世間の注目を集めたのが、問題作成などに携わる考査委員を務めていた明治大ロースクールの青柳幸一教授が、教え子である20代の女性受験生に問題の内容を漏らしていたとして、10月7日に国家公務員法(守秘義務)違反の疑いで在宅起訴されたことである。9月12日付けで教授職を懲戒免職された青柳元教授が漏らしたとされるのは、自身が作成に関与した憲法に関する問題。採点担当者から「答案の内容が模範解答に酷似している」との指摘があがって、今回の漏えいが発覚した。
女性受験者は今回の試験の採点対象外となり、今後5年間、新司法試験と予備試験の受験を禁止する処分を受けた。週刊誌では、その女性受験者に対する青柳元教授の依怙贔屓ぶりや、日頃からプライドが高く、名前の「青」から「ブルー卿」というあだ名が学生の間でつけられていたことなどが、面白おかしく伝えられていた。そして、明治大ロースクールの肝心な結果であるが、合格者数は53人で第9位。その数字だけ見ると立派なように思えるが、合格率はわずか14.60%で、平均の23.08%を大きく下回る。
新司法試験をめぐっては、07年に慶應義塾大ロースクールで考査委員だった教授が答案練習会を開いていたがことが明らかになり、公正さを揺るがすとして問題になったことがある。実はどのロースクールも人件費などを考慮すると単独では“大赤字”といわれる。「ロースクールが併設されていない法学部では意味がなく、学内の予算を回して維持している状況だ。それだけに、合格者の実績づくりで教員は大きなプレッシャーを受けている」(ロースクール関係者)。つまり、考査委員を兼務する教員は、ある意味で“利益相反”する2つの役職に板挟みとなる、厳しい環境に置かれているのだ。
翻ってみると、ロースクール入学選抜の15年度の受験者数はピーク時の04年度と比べて77.1%減の9351人。入学者数はやはりピーク時だった06年度と比べて61.9%減の2201人まで激減している。その結果、ロースクール全体の入学定員の充足率は0.69ポイントと1を大きく下回り、定員割れのところが続出している状態だ。学生の募集停止を発表したロースクールはすでに29校に達し、ピーク時の74校から45校に減少している。新司法試験は、予備試験組の台頭、その裏返しとなるロースクール離れなどで、大きな曲がり角に差し掛かっているようだ。