現在、幼児教育の早期化が世界的に注目されており、とくに欧州では顕著だ。たとえば、ハンガリーは3歳からの義務教育を開始。フランスでも2歳から入れる無料の保育学校(公立が主)があり、さらに3歳からの義務教育化を政府が検討中だ。こうした政策によって働く女性が安心して子供を産めるようになれば、少子化対策にもなる。働く女性が増えている日本でも、保育園の義務教育化を望む声は多い。
ただし、子育てに関わらない人々にはメリットを感じにくい政策であるし、国の財政負担も大きい。社会学者の古市憲寿氏は「今保育園に入所している人を無償化するには消費税1%分かかるという試算がある。だが、子供が大人になれば納税するから、結果的にすべての人に公平にメリットがある」と断言する。
また、この政策の最大のメリットは、「社会全体のレベルを上げること」だと古市氏は説く。ノーベル経済学賞を受賞したジェームズ・ヘックマン教授の研究によると、乳幼児期に良質な教育を受けた人は、高収入の割合が高く、犯罪率は低いといったポジティブな傾向があることがわかっている。つまり、中長期的に見て、保育園の義務教育化は社会的にメリットがあり、国の未来にいい影響を与えるといえるだろう。
(AFLO=写真)