近畿大2連覇、これだけの理由があった
2015年は数学と理科で新課程入試となった。この新課程は旧課程の“ゆとり教育”から“脱ゆとり”に舵を切った新しい学習内容だ。来年は全教科で新課程入試となる。今年は数学と理科だけだったが、新課程ということから過去問がなく、受験生は不安から確実に合格できる大学を受験する傾向が強くなった。文系受験生にも基礎理科が2科目課されることになり、この負担増を敬遠する動きが見られた。さらに、今年から始まる新課程は旧課程に比べて学ぶ範囲が広がっており、浪人すると不利との考えから、ゆとり最後の世代の昨年の受験生は現役で進学する人が多かった。今年のセンター試験の志願者は、昨年に比べて浪人生が1万3186人、11.8%減少した。
昨年、今年と受験生は弱気に入試に挑んだ。しかし、今年のセンター試験では、その受験生の不安が的中し、平均点は数学と理科で大きく下がり、理科はセンター試験史上2度目の得点調整が行われるほどだった。この結果を受け、国公立大では理系の志願者が減ったこともあり、全体で2.2%の志願者減となった。逆に併願校として狙われた私立大は、全体で0.8%の志願者増となった。
この状況の中、志願者数ランキングトップは2年連続で近畿大。少子化の逆風の中での2連覇だ。しかも昨年に比べて志願者は7814人、7.4%も増え11万3704人となり、近畿大の過去最高の志願者数となった。このため、昨年は2位明治との差は378人の僅差だったのが、今年は8000人に広がった。受験生の不安が追い風になったのかもしれない。近畿大人気は加速している。
近畿大が志願者トップになった理由はいくつかある。入試改革の面では、出願をすべてネットに変え、受験料は一律3000円割引などを実施してきた。女子受験生の増加も大きい。総合社会、建築など、女子に比較的人気の学部を新設してきた。
さらに研究の可視化に成功し、クロマグロの完全養殖、うなぎ味のナマズの開発など、水産研究所における研究成果は注目の的だ。今まで見えにくかった大学の研究を、誰にでも分かりやすく伝えたのは近畿大の功績のひとつだろう。キャンパスのインフラ整備にも積極的だ。女子学生を集めるには新校舎建設は欠かせない。こういった複合的に進められてきた受験生目線の改革が、志願者増に結びついているといえよう。