社内のコミュニケーションが円滑なら、お互いが気持ちよく仕事ができ、効率も上がるのではないだろうか。では、風通しをよくするための方法とは? 特徴的な取り組みをする5社を探訪した。

年に1度、家族も参加OKの社内運動会

15年前の今ごろ、筆者はキャリア・収入・会社の成長度の3点だけを気にしながら就職先を探していた。我ながらバカな大学生だったと思う。

今ならば社員同士の仲がよく、長く安心して働ける会社を選ぶ。ぬるい職場という意味ではない。共通の目標達成のために支え合い、それぞれが懸命に働いて、喜びも悔しさも分かち合うことができ、それでいて経営面も強い会社。探せば見つかる。

仲がよくて強い会社は必ずユニークな取り組みをしている。業種や土地柄、歴史、創業者の理念が違うのだから、施策が一様であるはずがないのだ。外からは無駄なコストのように見えるイベントや設備も、社員にとってはコミュニケーションを深めるために大切なものだったりする。

2004年に上場廃止となり、14年4月、親会社の西武ホールディングスが上場を果たした西武鉄道。その西武鉄道の社員とその家族、OB、OGを中心に、4000人以上も集まる運動会が復活している。場所はもちろん西武ドームだ。

「かつては社員グラウンドで行われていました。1998年を最後に10年間は開催されていなかったのですが、復活を望む社員の声もあり、08年から再び開催しています」(西武鉄道人事部・太田雅彦氏)

【西武鉄道】社内運動会が西武ドームで復活。会社や部門を超えた4チームで競う。家族参加可の競技や、フットサル大会、子供向けコーナーもある。

大玉送り、馬跳び、ドッジボール、親子買い物競争、100人リレーなどを職場対抗で競う。自由参加の運動会ではあるが、この日は勤務シフトから外してほしいと上司に要望する現場勤務の社員もいるという。

「老若男女がどの時間帯も何かしら楽しめる」工夫もある。若手社員向けのフットサル大会が同時開催され、子ども向けの「ファミリーコーナー」や西武沿線の特産品販売もある。運動はしたくない人でも家族連れで遊べるのだ。

恒例行事なので運営ノウハウが蓄積されているとはいえ、大人数が集まるイベントには時間も金もかかる。西武鉄道の人事部に加え、グループ各社から30人以上の実行委員を募り、約5カ月間の準備が必要だ。当日は1人1000円分の飲食券を配布する。

「横ばかりではなく縦の絆も深まります。職場では強面の先輩が必死で走っていたり、ビールを飲んで笑っていたり、家族の前で違う表情を見せていたり。オフの顔をお互いに見られるのはいいことだと思います」(同人事部・小川知哉氏)

西武グループ内で毎年行っている匿名のアンケート調査では、「西武グループの一員として働いていることを誇りに思いますか」という問いに対して、YESと答えた西武鉄道社員は06年が約75%だったのに対し、14年は86%を超えた。運動会も社内の一体感を高めることに一役買っているのは間違いない。